【五輪解説】見事な勝利 | NewsCafe

【五輪解説】見事な勝利

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なでしこが世界を再び席巻するかもしれない。そう予感させるような、見事な勝利だった。

すべてのオリンピック競技の中で先駆けて行われる女子サッカー。そのひとつである、なでしこジャパン対カナダ女子代表の一戦。スタジアムではメンバー発表前に、両チームの紹介ビデオが流される。そして、スタジアムDJが付け加える。「昨年のワールドチャンピオン、日本チームの登場です!!」。

サッカーの母国らしい演出に、スタンドのあちこちで日の丸が揺れる。イングランド中央部にあるコベントリーのスタジアムには日本人だけでなく、地元イギリスのティーンエイジャーの少女たちも『SAWA10』や『MIYAMA8』と入ったレプリカユニフォームを着て応援に詰め掛けた。もはや、なでしこジャパンは世界中のサッカー少女の憧れの的だ。

その期待通り、立ち上がりから日本ペースで試合が進む。なでしこは得意の"相手のボールの出ところを押さえる守備"で、カナダがプランしていたサッカーを封じる。カナダの中盤の底で絶妙なパスを配球するスコットを、完全に押さえ込む。エースストライカーのシンクレアら攻撃陣にチャンスボールを渡すことはほとんど無かった。

特にエース澤が、これまでの不調を感じさせないほどの活躍を見せてチームを鼓舞する。体を張って相手からボールを奪ったり、スペースに顔を出してボールをさばいたりするなど、好プレーを連発。攻守に渡って汗をかいた。

そして33分、エンドライン際で大野のヒールパスを受けた川澄が角度のないところからドリブルシュートを決めて、先制点を挙げる。続く44分には、鮫島のクロスを宮間がヘディングで合わせるという珍しい形で追加点が決まった。

2-0で迎えた後半。些細なミスで失点を喫する。それまでも狙われていた日本の左サイドをマテソンにフリーでのドリブルを許した後にクロスを上げられ、ゴール前で175cmの長身FWタンクレディに押し込まれてゴールされてしまう。
嫌な失点シーンだったが、その後もなでしこは慌てることなく、2-1とリードを守りきった。

試合の終盤、なでしこらしい象徴的なシーンがあった。
日本の左サイドを何とか崩そうとするカナダ。87分、ライン際をエースのシンクレアが強引に上がろうとしたところを、澤が体をねじ込むようにしてボールを奪いに行ったのだ。
"最後まであきらめない"という強いメッセージが込められた、渾身のチャージだった。

"ワールドチャンピオン"という看板を背負っているが、「私たちは、まだオリンピックのメダルを手にしたことはないですから。チャレンジするだけ」とは、澤の言葉だ。

終了の笛を聞くまで、決して手を抜くことなくプレーする姿を見たイギリス人の少女たち。興奮気味にスタンドから日本人選手たちに「Nice Game!!」と、声を掛ける。なでしこたちは、晴れやかな笑顔で手を振った。

なでしこジャパンはロンドンオリンピックでも、世界のサッカー少女たちを夢中にさせてくれそうだ。

[女子サッカーライター・砂坂美紀/ツイッター http://twitter.com/sunasaka1]
《NewsCafeコラム》
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