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空撮プロジェクトの意味とは

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「施設の屋上から抗議集会を報道したい」

NPO法人「Our Planet TV」(代表理事、白石草)と、個人としての白石さんが7月17日、国と記者クラブとしての「国会記者会」に対して、取材のために国会記者会見屋上の使用許可を命じるように、東京地裁に仮処分を申し立てました。フリーランスの取材をめぐっては、これまでも記者会見の参加や質問権をめぐる問題があります。また、法廷での記者席を割り当てることを求めるといったことは起きていました。しかし、施設の使用に関する申し立てはきわめて珍しいのです。

Our Planet-TVは非営利のインターネットメディアです。そのため、大手メディアにはできない一般市民の目線で、刑務所の受刑者、野宿者の問題、環境問題などを扱ってきました。「3.11」以後は子どもの命、人々の暮らしを守るために、必要な情報を取材してきました。その関連で、首相官邸前の抗議集会も報道しています。

官邸前の原発再稼働反対集会は徐々に人数が増えてきています。動員による集会とは違って、「首都圏反原発連合」が呼びかけ、Twitterなどで広がったのです。近年の日本ではこうした呼びかけで、一般市民が参加する抗議集会は珍しい。こうした集会の撮影は、どんな参加者か、またはどのくらいの規模なのかを把握し、伝えることはそれだけで十分に意味があるのです。

東京地裁内の司法記者クラブで会見した白石さんは「これまでも、Our Planet-TVでは、(政治参加の一つの形態である)市民のデモを重視して取材してきました。官邸前の、原発の再稼働を巡る抗議行動は、近年にないような、戦後初めてと言っていい大規模な行動になりました。インターネットを通じて一般市民に伝えるのは大きな意味がある」として、7月6日と12日に国会記者会に会館の屋上からの取材申請をしたといいます。

両日ともに対応をしたのは国会記者会の事務局長です。6日は30分ほど、13日(12日に郵送したものが到着した日)は約1時間ほど話し合ったといいます。しかし、記者クラブの所属メンバーではない等を理由に、屋上からの撮影を認めないこととなりました。しかしこれまで「言論の問題は言論同士で解決すべきで、裁判でやるのは批判的でした」と語った白石さんが、どうして仮処分申請という法的手続きを取ったのでしょうか?私がそうした疑問がありました。

「6月4日、野田首相は大飯原発の再稼働を認めました。その会見以後、野田首相に対する厳しい批判があがりました。それまでも、国会周辺ではデモがありましたが、徐々に人数が増えてきました。Our Planet-TVでも、スタッフ間で『どう取り上げるのか』を議論してきました。なかでも、非常に人数が集まって来ていることが焦点になり、集会の全体像を見せたいと思うようになりました。29日には市民のカンパで、空撮ヘリを飛ばすプロジェクトをし、カンパ950万円が集まりました」

官邸前デモは主催者発表と警察発表では大きく人数が異なります。22日の集会は主催者発表では20万人に対して、警察発表では1万7千人でした。私もこの日のデモを取材しましたが、神宮球場での野球観戦の規模というのが実感でした。私以外にも「規模」に関していろいろな見方が噴出しました。そのため、全体像を把握する必要がある…その意味で、空撮プロジェクトは意味があります。29日の集会でも規模が焦点になりましたが、東京新聞は、国会記者会館から撮影した写真が掲載されていた。それを見た白石さんますます伝える意味を感じ、「会館の屋上から長時間撮影できれば意味がある」と話をしていました。

「当初はフリーが屋上に上がったこともあったという話もあります。屋上から集会の様子を撮影したい、というだけです。今後もますます参加人数が増えることが考えられます。屋上に上がらせてもらえればそれでいい」

そもそも国会記者会館は、土地も建物も衆議院のものです。しかし、建物の管理は、任意団体としての記者クラブ「国会記者会」に委託されています。もともとは、1890年(明治23年)に、当時の帝国議会が国会取材を禁止したために、在京各社の議会担当が「記者団」を結成し、取材用の傍聴席を求め、確保したことが始まります。これが「記者クラブ」の始まりです。

弁護団は「衆議院の土地、建物に対して記者会が管理権を持っていることがなぜ正当化されたのか。それは報道の自由があり、政治の分野では認められて来ました。フリーの記者も、公的な会見では必要に応じて認めて来ています。さらに、空撮でもわかるように、屋上が混み合っているわけではないので、記者クラブの取材活動を制限しているわけではない」と主張しました。

また「報道の自由はまもるべきです。報道機関内の自治も強固にすべきだと思います。しかし、管理権を勝ち取っていたにもかかわらず、記者クラブ所属メンバー以外の屋上の使用が適切か不適切かの判断ができない。そのため、クラブのメンバーに限ったというもの」といい、判断に正当性がないことも強調しました。

私もフリーランスのライターです。ライターには無関係と思いがちですが、同じ問題を抱えています。カメラ撮影をすることもあります。できるだけ自由な取材活動を正確な報道ができる環境が必要です。国会記者会館は現在、官邸前抗議集会の最前線が見渡せます。何が起きるかわかりません。撮影ができれば、その瞬間を見逃すこともないでしょうし、集会へのイメージも変わるかもしれません。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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