「寄付・資金集め」の新しいかたち | NewsCafe

「寄付・資金集め」の新しいかたち

経済 ニュース
「ソーシャルファウンディング」という言葉をご存知でしょうか。
簡単に言えば、資金を集めることなのですが、最近では、そうしたソーシャルファウンディングをインターネットを活用し、行なっているところが多くなってきています。

「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」というサイトは、主にクリエイターや社会貢献をしたい「プロジェクトオーナー」が、企画の趣旨を投稿します。その趣旨に賛同した「ソーシャルパトロン」と呼ばれる人たちが「このプロジェクトを支援」というボタンを押します。支援の形はいわば「寄付」なのですが、一回500円から参加できます。寄付額によっては、そのプロジェクトの報告だけでなく、「リターン」として、そのプロジェクトでできた成果物を得ることもできます。

企画を投稿する場合、このサイトでは、そのプロジェクトで集める目標額が設定されまる。期間は7日から90日の間でできます。目標額に達した場合のみ、8割の決済されます(2割が手数料)。達しなかったら、決済されません。企画趣旨に賛同した人が多ければ多いほど、また、一人当たりの「支援」が多ければ多いほど、目標額に近くなることでしょう。

こうした企画の売り込みは、これまでは企業を回ったり、個人的なスポンサーを募ったりしていました。しかし、こうしたオープンな形で企画を売り込むことによって、より幅の広い人たちから資金を集められることになります。

また、スポーツ選手(アスリート)を応援しようというソーシャルファウンディングサイトもあります。アメリカの4大スポーツのNFLに、元早稲田大学のクオーターバック(QB)の井上友綱さんが挑戦しようとしています。一時は入団が決まったのですが、09年1月の世界同時不況の結果、入団先が消滅してしまったのです。資金繰りも厳しくなってきています。そこで、ソーシャルファウンディングに参加することになったのです。

「ガッチャバック!」は、トップアスリートを応援したい人たちを集めるサイトです。1000万円のスポンサー企業を探すよりも、1000円単位でスポンサー(バッカー)をしたい1万人の有志を捜そうというのが始まりでした。

NFLへの壁のひとつは「資金」でした。それが、日本人選手の参入を妨げていた一因でもありました。これまでは実現が困難でしたが、「資金」を集めることによって「夢」に近づく手伝いができるといったものです。

一方、私のような「書き手」、ライターやジャーナリスト、小説家、俳人の場合は、こうしたソーシャルファインディングが得意な人たちが少ないのです。こうした「書き手」がファンディングする一つの手段はメルマガです。しかし、雑誌とは違い、1人の書き手だけが書くのが基本です。そうした1人のためにお金を出すとなると、有名人に集中してしまいます。そのため、メルマガで十分な資金を得られるのはごく少数です。家賃を払えるほど集められるのもまれだと思います。私の場合は、知名度がそれほど高くないために、読者数も限られます。

また、有料のウェブマガジンを作成している人たちもいます。しかし、まだ、有料で記事を読むという習慣がないためか、とても苦しんでいます。知人も作っていたりしますが、なかなか取材費をまかなうのも難しいと聞きます。今度、別の知人が新たにサイトを開設します。私もそのサイトに参加することになっていますが、どのくらいの読者が集まるのかは未知数です。

取材活動、ジャーナリスト活動、小説執筆の支援などを目的に、記事を読む対価とは違った意味で、「書き手を支援」するといった寄付で成り立つ場合もあります。経験上では、有料のメルマガやウェブマガジンよりも、資金が集まりやすいのです。実際、これで取材活動をまかなっている人もいます。

ただ、多くの「書き手」、特に取材活動をする人たちは、これに抵抗があるようです。私も、「寄付」という手段に抵抗があるのは理解できます。なぜ「寄付」に抵抗があるのかと言えば、ものすごく不安定な基盤であること、また、一読者の場合は、同じ額で読まれているので公平です。しかし、寄付者の場合、どうしても多額の行為をしている人に対して、すり寄ってしまうのではないか、という心配があったりします。このあたりは、どこのメディアで多くの仕事をしているのか、でもすり寄りが出て来てしまうリスクもあります。そのため、「抵抗」という意味では同じなのではないかと最近、考え始めています。

もともと私のようなフリーの場合、本を買ってもらう、雑誌の記事を読んでもらうことがソーシャルファウンディングでありました。しかし、出版不況でそれが十分ではないとするならば、いかなるファウンディングがあり得るのでしょうか。最近は、そんなことを考えています。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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