台風2号から変わった温帯低気圧などの影響で、東日本大震災の被災地は大雨に見舞われた。
地盤沈下が起き、堤防が壊れているところもあるために、宮城県の岩沼市や石巻市などでは冠水した。
福島県相馬市でも、新田地区が海面の水位があがり避難勧告が出された。
地震や津波、原発事故だけでなく、梅雨の時期にもなるために、水害といったさらなる被害とも対峙しなければならない状況になっている。
今回の大雨になる前、石巻市渡波地区では、満潮時には冠水してしまうことが問題となっていた。
地盤沈下のためだ。
石巻港でも、同じ光景が見られる。地盤沈下はいたるところで見ることができる。
被災地の海岸沿いを取材していると、海面が近いように感じる。
「海水の水位が上がっている?」
最初はそう思った。
もしかすると、満潮時に見た地域もあるかもしれない。
しかし、干潮時にもそう見える地域が多かったのだ。
それだけ、地盤沈下が激しいということだ。
さらに、堤防が決壊しているところがある。東松島市の新東名地区だ。
ここは堤防が壊れており、満潮時には海水が入って来てしまう。
この地域には東名運河が奥松島パークライン沿いに流れている。その運河も水位が高くなるのだ。
4月15日に東名地区を訪れた時、近くにあった特別擁護老人ホーム「不老園」に行った。
職員や入所者に死者が多数出た施設だ。
そのとき、自衛隊が捜索活動をしていたのだが、引き上げて行った。
なぜ自衛隊が引き上げたのかわからなかった私は、「不老園」の被害状況を見ていた。
周囲には田んぼがあり、まだ水が引いていなかった。
ちょろちょろと水が流れてきていたのだが、しばらくすると、その水の流れが勢いを増して行った。
このままでは、孤立してしまうと思った私は、はやくその場から立ち去った。
震災一ヶ月経った時期のことだ。
他の地域の避難所では当初、緊張感がある雰囲気だったが、この時期になると、多少は気持ちに余裕が出て来ている避難所が多く感じていた。
それは、避難所だけでなく、自宅避難者も同じことが言える。
「一挙に家が流されたのだから、諦めるしかない」
そんなことを言っていた人がいたが、ここ新東名では、震災当初だけでなく、いまだに「水の恐怖」と闘っていた。
そのため、他の地域よりも緊張感が漂っていた。
取材に応じてくれた人が少なかったのは、そのせいかもしれない。
取材に応じている時間よりも、早く家の整理をしたいという気持ちがあったのだろうと思った。(続く)
《NewsCafeコラム》
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