
*1 花王ニュースリリース 2019年1月23日 花王史上最高の洗浄基剤「バイオIOS」を開発 ~洗浄の世界に革新をもたらす~
*2 対象表面の性質を変えて、潤滑能・帯電防止能などを付与すること(例:ヘアコンディショナー、繊維柔軟剤などに用いられる)
背景
界面活性剤は、ひとつの分子の中に、水になじみやすい親水基と油になじみやすい疎水基(アルキル鎖)の2つの部分を持つことで、水と油を混ぜ合わせたり、汚れを落としたりすることができ、洗浄剤の主成分として広く活用されています。しかし、世界人口の増加などにより界面活性剤の需要が増加していること、界面活性剤の疎水基の原料となるヤシやパームの生産可能地域が限定されることから、環境問題や人権問題などの課題が指摘されています。

衣料用洗浄剤における界面活性剤の働き
界面活性剤は、水中でさまざまな形状の集合状態で存在し、その形状によって発現する機能が変化します。たとえば、界面活性剤が水中で球状の集合体(ミセル)として存在していると洗浄力を発揮し、二重膜のカプセル状の集合体(ベシクル)を作ると、表面に付着しやすくなり表面状態を変化させることができます。界面活性剤が水中でどのような形状で存在するのかは、界面活性剤の種類や、水中での濃度に依存することが知られています。
衣料用洗浄剤には、優れた洗浄性からアニオン界面活性剤が使われています。しかし、実際の洗浄場面で使用する水道水には、カルシウムイオンなどが含まれているため、その影響を受けて、しばしば洗浄性が低下してしまいます。花王は、アニオン界面活性剤の一種であるバイオIOSがカルシウムイオンを含む水中でどのような形状で存在するのかの本質解明研究を進めることで、バイオIOSに特有の新たな機能を発見しました。
洗浄と表面改質の2つの機能を併せ持つアニオン界面活性剤
日本の水道水と同等量相当のカルシウムイオンを含む水に、アルキル鎖の炭素数が18のバイオIOS(C18IOS)をさまざまな濃度で希釈し、その挙動を解析しました*3。その結果、C18IOSは、濃度が高い領域でミセルを形成するだけでなく、ある特定の濃度領域では、ベシクルを形成できることが明らかになりました(図1)。
アニオン界面活性剤が、水道水中に含まれるカルシウムイオンを活用してベシクルを形成することはこれまでに報告がなく、さらにひとつの界面活性剤が水道水中の希釈濃度によってミセルとベシクルという異なる集合体を形成することも非常に特異的な現象です。これはバイオIOSがアルキル鎖の中間部に親水基をもつ分子構造に起因すると考えています。
*3 透過率、平衡表面張力、色素可溶化および動的光散乱測定、凍結割断透過型電子顕微鏡観察

まとめ
花王は今回、独自開発したアニオン界面活性剤バイオIOSが、水道水中でベシクルを形成できること、このベシクルが表面に付着して表面状態を改質する機能を持つことを発見しました。従来、表面改質に用いる界面活性剤は洗浄には使いにくく、洗浄に用いる界面活性剤は表面改質には使いにくいことが知られています。本研究より、バイオIOSは特定の条件下で、水道水中の成分を活用することでミセルとベシクルの両方を形成できることが明らかとなり、ひとつの界面活性剤で洗浄と表面改質の両方を実現する可能性が示されました。
花王はこれからも、物事の本質を追求する基盤技術研究を通して、人や地球にやさしいモノづくりを進め、将来にわたって人々に清潔な生活を提供していきます。
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