都民ファ圧勝の都議会結果をどうみるか | NewsCafe

都民ファ圧勝の都議会結果をどうみるか

社会 コラム
7月2日の都議会選挙は、自民党の歴史的惨敗、そして、新興勢力の地域政党「都民ファーストの会」(以下、都民ファ)の圧勝という結果でした。都民ファ候補が落選したのは島しょ部だけ。都議会選挙でこれほど自民党が拒絶された結果はありません。民主党が圧勝した2009年8月の衆議院議員選挙でも、東京都の25選挙区で4議席した獲得できなかったことがあります。当時よりも自民党に逆風が吹いたということが言えるのではないでしょうか。  

都議会選挙は127議席を争いました。そのうち、小池百合子都知事が率いた都民ファは55議席(当選後に公認をした候補を含む)で第1党になりました。多くの小池チルドレンが誕生したのです。選挙協力をした公明党は23議席で、選挙前の議席を確保しました。また、小池都知事を信任している生活者ネットは1議席を確保したものの、都民ファへの追い風の中で、野党とともに吹き飛ばされてしまったのでしょう。

都民ファへの追い風は、“強風”というほどではなかったように感じます。もちろん、小池都知事への期待感は、支持率が低下気味でありながらも、まだ高いものがあります。古い既得権益と戦っているというイメージを持ち続けているうちは、期待感は継続するでしょう。とはいえ、都民ファの議員のほとんどは、知名度もなく、政治経験もありません。都民ファへの投票は、各議員への投票ではなく、小池都知事の信任投票の側面がありました。

と同時に、自民党への不信任でもあったと思います。終盤国会での、共謀罪(テロ等準備罪)を参院法務委員会で採決せずに本会議で採決をするという強引な方法、森友学園や加計学園をめぐる疑惑への中途半端な対応、豊田真由子衆議院議員=埼玉4区=の秘書への恫喝とも言える音声データの漏洩も、自民党への不信感を抱かせる要因だったように思います。

2015年9月、憲法9条の解釈を変更する閣議決定、それに伴い安保法制が成立し、それ以降初めての大型選挙でした。国会周辺の抗議行動の動員数を考えれば、共謀罪よりも、安保法制成立過程への怒りは高かったことを想像させます。その怒りが継続していたかは不明ですが、自民党への怒りを目覚めさせたのではないかと思わせる選挙結果でした。

本来であれば、野党第1党の民進党が、自民党への怒りの受け皿になるはずですが、いまいちパッとしません。存在感も大きくは感じません。都議会に限って言えば、2010年に、非実在青少年問題がありました。漫画の登場人物が18歳未満の場合、性表現を厳しく制限させる青少年健全育成条例改正問題があったのです。しかし、過度な表現規制として若者を中心に反対の声が強くなりました。若手議員も党内で反対論を形成し、その結果、改正案は否決されました。当時は民主党が第1党でした。都側提出の条例案が否決されるのは異例でした。

しかし、国政の停滞と連動したためか、13年には民主党は第4党へ転落。共産党よりも議席を減らし、存在感は薄くなっていきます。その後、維新が合流した民進党になっても、有権者の期待感は高まりません。自民党への不信感が高まっても、受け皿がない状態が続いていましたが、その受け皿として都民ファが消極的な選択として浮上したと言えるのでしょう。

 そもそも、都民ファには、元自民、元民進、元かがやけTokyoというそれぞれの党派・会派から移った議員もいます。議員側の視点に経てば、風を読んで、どの党派・会派にいれば当選しやすいのか?という計算が働いたと言えるのではないでしょうか。また、風に乗った典型は公明党かもしれません。国政では自民と連立を組みつつ、都政では小池都知事の支持が高いとみるや都民ファと組む。勢いのある方と一緒になれば当選確率が上がるのは当然です。

小池都知事への期待から、有権者は都民ファへ投票したと思います。しかし、選挙が終わったと同時に、小池都知事は代表を辞任しました。地方自治は、有権者が知事を選び、そして都議も選ぶ「二元代表制」です。第1党の代表が知事ならば、議会が知事をチェックできるのかという批判がありました。その批判の声をかわすのが狙いなのでしょう。  

後任は野田数代表。元都議で、小池都知事の特別秘書です。大日本帝国憲法復活の請願を都議会に提出した経験があります。現行憲法を無効とすると同時に、それにもとづく皇室典範も放棄すべきと主張した過去があります。野田氏は都民ファができた当時から代表でしたが、選挙前に小池都知事が代表になったときから幹事長になり、代表と幹事長の二人による「役員会」で、小池代表辞任、野田代表復帰が決められました。

規約通りだとしても、選挙後、すぐに代表を辞任というは、有権者は納得するのでしょうか。それと二人の「役員会」だけで決めるのもどうなんでしょうか。また、当選した候補者はこのことをどう感じていうるのでしょうか。新人議員が多い都民ファは、こうした党運営の中で納得しながら議員活動できるのでしょうか。小池代表でない都民ファにどれだけの期待感があるのでしょうか。小池チルドレンはいつまで都民ファにいるのでしょうか。まだまだ流動的な要因がありそうです。
《NewsCafeコラム》
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