道に迷ってたどり着いたのは悪魔の町だった。
見渡す限りの悪魔たちは、
頭からイガイガの矢印つけて、
青ざめた顔をして、
片手には槍を持った、
何度も絵で見たことのある、悪魔その物だった。
私は恐怖に怯えたが、
「やいやい!」と槍を見せつけるだけで、
「やいやい!」と言いながらご飯をくれ、
「やいやい!」と言って水をくれた。
帰り道がわからないと訴えると、
「そんなの知らねぇよ!」と言って、
手から石ころをコロンと転がした。
石ころには矢印が書かれていて、
悪魔は「あっち」と言わんばかりの目配せをした。
その方向に歩いて行くと、
また悪魔が現れて、
「やいやい!」と槍を振り回し、
コロンと石を転がした。
少し歩くとコロン、
また少し歩くとコロン。
何人の悪魔が石を転がしてくれただろうか。
そうしてやっと町の出口に差し掛かった時、
最後に振り向いて町を見ると、
たくさんの悪魔たちが、
心配そうにこちらを見ていた。
私が深々と頭を下げると、
悪魔たちは「プイッ」と一斉に立ち去った。
[執筆者:むろはな江]
《NewsCafeコラム》
page top