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参議院選から都知事選へ

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 参議院選挙。みなさんは投票へ行きましたか。

 全国の投票率は54.09%で、前回より2.08ポイント増えました。私は東京都選挙区で、今回から増えたラスト1議席をめぐって激選区となったので、投票への関心が高まりました。東京では57.49%。前回よりも3.99ポイント増えたのす。一方、もっとも減少幅が大きかったのは高知県でした。4.37ポイント減らし、投票率は45.52%と半数を割り、ワースト1位だったのです。徳島県との「合区」となり、候補者は徳島県出身者のみでした。選挙区内での“おらが村の代表”を選ぶ方式の選挙では、しらけるのも当然です。

 選挙結果をどのように解釈するのかは難しいところですが、多くのメディアの出口調査の傾向を見ても、若年層ほど「与党」=自民か公明=に投票しています。そして年齢層があがるほど「野党」=民進、共産、社民、生活=投票しました。結果、全体としては「現状維持」を選択したのです。ただ、積極的に与党を選択したわけではなく、選挙後に行った朝日新聞の世論調査では「野党に魅力がなかった」が71%となっています。つまり、与党以外に選択肢が浮かばなかった、ということでしょう。

 野党の魅力不足は深刻な問題です。旧民主と旧維新が合流して「民進党」ができましたが、党幹部、つまり党の顔は、旧民主と旧維新とほとんど変わりませんでした。これでは新しさを感じるというよりは、単に、選挙のための野合としか見えません。もちろん、自民と公明との選挙協力は当選可能性を高めるためです。同じように見られてしまったら、野党に投票する積極的理由もありません。

 また、自民党や公明党は政党の理念がはっきりしています。とはいえ、その政党の理念を十分に想定して投票しているとは考えにくいでしょう。特に自民党に投票した人は、政党の理念というよりは、アベノミクスの是非や、選挙中に呼びかけた雇用や社会保障、教育問題に関心を持っていたことでしょう。しかし、野党は、「安倍政権の暴走ストップ!」「3分の2阻止!」という曖昧、かつ、後ろ向きなメッセージに終始しました。いったい。野党が目指している未来は何なのか。まったくわかりません。

 それに加えて、人材不足です。政党の理念がはっきりしない民進党に、積極的に参加するような人たちが多いはずがありません。民主党のときにも言われましたが、政党の理念を示す「綱領」がありません。<必ずしも綱領には賛成ではないが、現実に政策を実現しようと思ったら、自民党に入るしかない>という政治家はいます。特に現在の勢力ではそれが現実的だと思うっての不思議ではないでしょう。

 人材不足は都知事選挙にも表れています。これを読んでいる人で東京都民はどのくらいいるのでしょうか。自民党は大臣経験者の中から候補者が出ました。しかし、野党統一候補としてはジャーナリストです。政治家の名前が途中まであがっていましたが、「勝てる候補」として選択しました。

 たしかに、ジャーナリストでも都会議員や国会議員の一人ならその選択もあります。あるいは、どうしても強い信念があり、実現したい政策があり、かつ、候補者選択の中で、透明性が確保されているのであれば歓迎したいところです。

 野党はいったい、なぜ政治家から選択しないのでしょうか。十分な説明もないままです。それこそ、密室で決められた印象があります。これではいつも批判している自民党の密室性と変わりません。都民は、政党の利害関係の中で、選択するしかないのでしょうか。投票率の低さは、こうした政党の策略に嫌気がさしていることの表れではないでしょうか。

 東京都は、スウェーデンやギリシアの国家予算に匹敵する予算を持っています。都の職員数は、甲府市の人口とほぼ同じです。そうした巨大な組織を動かすのにふさわしい候補者は誰か。2代続けてお金の問題で辞任、3代続けて任期途中でやめた知事が続きました。今回は少なくも、お金の問題はクリーンで、任期途中では辞めない体力や精神力、戦略を持っている候補者を選択したいところです。
[文:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》
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