女子中学生の同級生自殺 | NewsCafe

女子中学生の同級生自殺

社会 ニュース
東京都内で女子中学生の2人が電車に飛び込み、死亡しました。報道によると、9日夜7時20分ごろ、東急大井町線の荏原町駅(品川区)で、区内の同じ中学校に通う中学2年生で13歳の女子生徒2人が電車にはねられました。2人が一緒に手をつないで、ホームから線路に飛び込む様子を運転士らが目撃したといいます。2人の女子生徒は「人間関係に悩みがある。死にたい」などと書かれた手書きのメモをカバンに残していました。

2人の自殺の原因について詳しいことはわかっていません。品川区教委によると、これまでいじめやトラブルなどの報告は受けていないといいます。遺書にも「いじめ」に関する内容はありませんでした。

内閣府の「自殺対策白書」(平成27年版)では18歳以下の自殺者について、過去約40年間の日別の自殺者数を調査しています。夏休み明けの9月1日が最も多いのですが、春休みやゴールデンウィークなどの連休明けに自殺者が増える傾向があるとされています。

日本全体の自殺者数は減少傾向にあります。自殺対策基本法が成立した時の削減目標は、05年の自殺死亡率を20%以上、減少させることでした。警察統計で見てみると、05年の自殺者は3万2552人、人口10万人あたりの自殺死亡率は25.5。15年の自殺死亡率は18.9。当初の数値目標を達成しました。

一方で、中学生は101人(男性が67人、女性が34人)昨年の74人から27人増えています。「学生・生徒等」の合計では844人(男性577人、女性267人)。前年は854人(男性633人、女性221人)で、やや減少ですが、中学生は27人(男性9人、女性18人)増加したのです。

原因・動機別でみると、学校問題が50人(男性34人、女性16人)で14人(男性6人、女性8人)増えました。このうち、その他が13人(男性9人、女性4人)ですが、学業不信が11人(男性7人、女性4人)、学友との不和が10人(男性6人、女性4人)、進路が8人(男性6人、女性2人)、いじめは1人(男性1人、女性0人)です。今回の中学生2人は、人間関係に悩んでいたとするメモがありました。この分類でいえば、「学友との不和」になるのでしょか。

また、家庭問題が26人(男性15人、女性11人)で2人増加、健康問題が11人(男性8人、女性3人)で2人増加、男女問題6人(男性5人、女性1人)で前年は0人でした。その他8人(男性5人、女性3人)は3人(男性2人、女性1人)増えたのです。

統計は、2007年に自殺統計原票を改正し、遺書など自殺を裏付ける資料によって明らかに推定できる原因・動機となると思われる項目を3つほどあげています。ただ、遺書に真の理由を書いていない場合もありますので、必ずしも、事実を反映しているとは限りません。遺書がない場合は、警察が遺族らの聞き取りによって判断します。その場合、あくまでも遺された側の「物語」であって、亡くなった側の「物語」とは一致しているとは限りません。

私がこうした若者の自殺問題を取材するようになったのは1996年以降ですが、取材した若者もすでに亡くなった人たちがいます。その中でも、2003年に亡くなった中学生のことは忘れることができません。彼女によると、彼女は父親からは身体的虐待、母親からは過干渉、兄からの性的虐待を受けていました。直前には母親と喧嘩をし、ネットで自殺予告をしたのです。

彼女の場合、精神科にも通院していたため、全く相談相手がいなかったわけではありません。ネットでも同世代だけでなく、同じような被虐待体験をしていた大人たちともつながっていました。そのため、悩みを共有する人もいました。葬儀のときも数百人が参列するなど、孤立はしているようには見えませんでした。しかし、将来の進路について母親が否定をしたことで、それが引き金要因となってネガティブな感情を呼び起こし、自殺をしてしまいました。

そのとき、母親が将来の夢を否定しなければ.....。そう思うこともなくはありません。しかし、それ以前に、家庭環境が少しでも希望があるものであるならば...と思うこともあります。すべての自殺を止めることは難しいかもしれません。ただ、亡くなる人たちは最後まで、生きることへのヒントを探し続けていると思います。もちろん、悩みを言う相手も選んでいます。

文科省の「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」によると、自殺予防には「TALKの原則」と言われているものがあります。Tは「Tell」で、声に出して伝える。Aは「Ask」で、「死にたい」という気持ちについて素直に尋ねる、Lは「Listen」で、絶望的な気持ちを傾聴する、Kは「Keeo safe」で、安全を確保するの意味です。もし、友人や恋人、家族から相談されたら、自殺の話題を避けないようにしてください。できれば一人で抱えることなく、複数で対応してほしいと思います。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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