学校事故調査のあり方は? | NewsCafe

学校事故調査のあり方は?

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「『学校事故に関する調査研究』有識者会議」(座長、渡辺正樹・東京学芸大学教授)は、学校事故の対応骨子案が示しました。読売新聞や毎日新聞が伝えた内容を参考にすると、学校事故が起きた場合、発生から3日以内に関係する全職員から事情を聞き、第三者による調査をします。また、被害者家族らを支援する「学校事故コーディネーター(仮称)」の派遣を盛り込むと、となっています。

学校事故といっても様々なものがあります。例えば、体育や部活動中の事故、生徒指導をしているなかで生徒が自殺をしてしまう「指導死」、組体操での事故、いじめに起因する自殺、食物アレルギー事故、震災時の避難中に事故などがあります。

私も、この有識者会議を傍聴したことがあります。東日本大震災で児童74人が死亡した宮城県石巻市の大川小学校の遺族や、避難中に園児5人が死亡した同市の私立日和幼稚園事故の遺族のヒアリングでした。この二つの事故の遺族とは東日本大震災の取材で知り合いました。両方の事故遺族ともに、事故の事実の詳細や事故から得た教訓を訴えていました。

日和幼稚園の遺族は特に、事故現場の視察を要望していましたが、有識者会議としては視察を行わないとの回答が寄せられました。個別ケースは扱わないということでしょうか。ある遺族は「本当に遺族のためなのか?」と疑問を呈していました。

事故調査では、被害者家族や遺族と、学校や教育委員会が対立してしまうことがあります。特にどんな事実があったのか?を最も知りたいと家族・遺族は思ったりします。しかし、学校や教委は法的責任を追及されるのを避けて、隠蔽したり、報告するのを怠っているケースもありました。

昨年10月、沖縄県豊見城市の小学校4年生の男児が自殺しましたが、アンケートでいじめを訴えていました。学校は読んでいなかったとしています。なんのためのアンケートだったのでしょうか。

大川小学校の学校事故の津波から避難するのが遅れて多くの児童が亡くなりました。市教委は、生存した児童たちから聞き取りをしています。しかし、聞き取りメモを破棄してしまったことが地元の河北新報のスクープによって明らかにされました。この事故では、遺族が宮城県と石巻市を訴える訴訟になっていますが、唯一の生存教諭がPTSDを理由に事故調査でも十分な証言をせず、裁判でも尋問に現れるかどうかは微妙な情勢です。

いじめ防止対策推進法では、子どもが自殺したり、不登校になるなどの重大事態になった場合、調査委を設置することができます。これまでの調査委の設置では、市の顧問弁護士が委員に選出されたケースもあるなど、公正な調査とは言えないものもありました。また、いじめの事実を認めなかったり、認定をしたとしても、家族関係を自殺の原因にしてしまっている例もありました。亡くなった子どもに精神疾患があった場合、いじめと自殺の因果関係を認めないこともありました。

毎日新聞ウェブ版(1月26日付)によると、文科省は来年度から、重大事態に対応するため、同省の職員や専門家を派遣することになりました。学校や教委への指導・助言が目的です。大川小学校での学校事故調査も文科省が仲介に入っていましたが、結局、遺族と学校・教委は対立のままでした。形式だけでなく、なぜ対立をしたのかを振り返る必要があります。

学校事故の調査といじめに関連した調査は、基本的には同じ手法、枠組みでなされます。その意味では、学校事故調査でも、いじめ防止対策推進法で課題となった調査委のマイナス面をどのようにクリアにしていくのかが一つのポイントです。調査委が公正中立でありながらも遺族の心情に寄り添った調査をすること、初動調査を迅速に行うこと、得られた情報を被害者家族・遺族と共有すること、さらに、できるだけ多くの情報を社会に公開していくことが求められるのではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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