過労自殺訴訟でワタミが和解 自分を守るために | NewsCafe

過労自殺訴訟でワタミが和解 自分を守るために

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2008年6月、正社員だった女性(当時26歳)が居酒屋「和民」で月141時間の残業を強いられ、入社2ヶ月で過労自殺しました。ワタミや創業者で当時代表だった渡辺美樹氏(自民党参議院議員)らを相手に、法的責任(安全配慮義務)があるとして、遺族が訴えていました。東京地裁で12月8日、和解が成立しました。渡辺氏らは法的責任を認めて、謝罪。1億3000万円を超える和解金を支払うことになったのです。

過労やサービス残業を強いたり、パワハラやセクハラが横行したり、偽装請負などが問題となっている会社を「ブラック企業」と呼んだりします。2013年のブラック企業大賞(ブラック企業大賞企画委員会が主催)に選ばれたのがワタミフーズ」でした。理由になっていたのは、まさに、この裁判のことでした。

渡辺氏は裁判で「道義的責任はあるが、法的責任はない」と争っていたのですが、和解協議で渡辺氏は「自らの経営理念が過重労働を強いた」などとして、法的責任を認めたのです。ワタミ側も過重労働対策をすることにも同意。和解の内容を、ワタミと渡辺氏のホームページに一年間掲載することにもなりました。

「ブラック企業」をめぐる問題は深刻ですが、どこの企業が「ブラック企業」で、どこが「ホワイト企業」(ブラック企業の対義語)なのかはなかなか見分けがつかないものです。もちろん、労働法制を厳しくし、チェックしていくのが王道ですが、すべてをチェックしきれません。そのため、見分けることが自分を守る手段になります。

「ブラック企業」の著者で労働問題に取り組むNPO法人代表・今野晴貴氏や、「下流老人」の著者で生活困窮者支援をしているNPO法人の代表理事・藤田孝典氏、日弁連労働法制委員会事務局長の棗(なつめ)一郎氏の3人が「ブラック企業対策プロジェクト」をつくっています。同プロジェクトは大学生向けの「見分け方ガイド」を作成しています。

たとえば、リクナビやマイナビの情報は学生側のための情報ではない、3年後の離職率が高い企業は要注意、採用実績が多すぎるのも要注意、平均勤続年数が短い企業も注意、有休消化年平均もチェック、採用選考プロセスが簡単すぎるもの注意、初任給が高くても昇給しない場合もある…などです。

最近はこうした「ブラック企業」問題に関心が集まってきました。そのため、労働相談にのっているNPOや労働組合にも多くの企業の情報が集まってきています。しかし、まだまだ相談をする人が多くはないという印象です。

先日、あるポスティング会社に入ってからすぐに自殺した青年の遺族が裁判を起こしました。その会社についてネットでは「ブラックだ」との書き込みがありましたが、相談をしているNPOや労働組合には相談事例がありませんでした。「ブラック企業」としての企業体質から青年が自殺したのかどうかはわからないままです。

勤めている会社が「ブラック企業」だと思ったとしても、労働者側が簡単に辞められないと思ったり、別の仕事が見つかるかどうか不安といった声も聞きます。ブラック企業は、労働者側の誠実さや不安感を利用しているのではないかとも感じています。しかし、働く側としては、自分を守るためにも、また職場環境を改善するためにも、一度は、相談窓口に出向くことをおすすめしたい。過労自殺の犠牲者を出さないことにもつながるかもしれません。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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