候補者ネット投票は若者層を取り込めるか? | NewsCafe

候補者ネット投票は若者層を取り込めるか?

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インターネットを通じた政治参加は以前と比べれば、比較的容易になってきました。もちろん、政治参加といった場合、さまざまな段階があります。政治的な意見表明をブログやツイッター、SNSを通じて発信していくこともできますし、同じ考えの人たちとつながることもできるようになりました。

政治的な立場をなかなか表明しないと言われてきた日本人が、ネットでそうした政治的なつながりを求めるようになったのはやはり、東日本大震災後だったのでないでしょうか。原発へのスタンスを表明したり、反論したり。何が正しいのかを求めて発言を繰り返していく。

つながりができると、たとえば、ツイッターでは同じような人ばかりの意見が目に付きます。たとえば、反原発や脱原発の考えを持ったとして、似たような人と繋がろうとすると同じような意見がタイムラインに流れていきます。まるで、世の中の人たちは、みんな反原発や脱原発なのではないかと思うほどです。

しかし、現実を見せつけられるのが選挙です。世の中の人たちの投票行動は、反原発や脱原発を中心になされているわけではありません。もっと多くの争点が存在し、また、現実の人間関係や利害関係でつながっています。そのため、自分たちが強く思っている争点だけが重要なのではありません。

それは安保関連法の制定過程でもそうです。各メディアの世論調査では圧倒的多数が法案成立反対、もしくは説明不足という声でした。その一方で、安倍政権の支持率が極端には減りませんでした。しかも成立後は、支持率が常用しています。

自分の意見と同じような人たちとつながっている人たちは、自分たちの意見のほうが"正義"だと思いたいのでしょうか、世論調査の結果がでると、絶望的なツイートをしていたりしました。なぜ、安保関連法案が支持されないのに、政権支持率が上がるのかが理解できないようです。しかも、投票率が上昇していく傾向は見られません。

そんな中、自民党は、来年夏の参議院選での立候補者をネットで投票して選出する「参院選公認候補『オープンエントリー』プロジェクト2016」を実施することになりました。面接で10人に絞り込み、4月のネット投票で、比例区での立候補者1、2人を選出しようとする試みです。投票できるのは党員と事前登録した人です。

これは18歳選挙権が導入されたことで、若者層を取り込もうとする動きだと思われています。たしかに、「18、19歳」の新たな有権者に対するアピールにはなることでしょう。投票に際し、党員でなくても、事前登録も可能となれば、党員としての資質だけでなく、人気を兼ね備えなければなりません。諸刃の剣にもなりかねません。しかも、ネット投票から本番の選挙までの間、ネガティブな過去がないかどうかのマスコミによる身体検査にさらされることになります。これに耐えられれば本物なのかもしれませんが....。

しかし、ネットでの窓口を広げれば、若者層を取り込めるといった考えは安易ではないでしょうか。そもそも、これまでの選挙では20代の投票率はほかの世代と比較すると最も低い。そんな中で、20代よりは高い可能性はありますが、18、19歳の投票率が高くなるとは考え難い。いわゆる"意識高い系"を取り込むことはできるでしょうが、ますます一般層とは乖離していくのではないかと心配します。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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