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与党に対抗するには「共闘」と「首相候補」

社会 ニュース
「宮城秋の陣」といわれた宮城県議選(25日投開票)で、安全保障関連法の廃止を前面に訴えた日本共産党が8議席となり、倍増させました。8月の仙台市議選に続いて、共産党の議席が伸びたのです。その一方、自民・公明の県政与党は27人が当選。一議席減らしたものの、過半数を確保しました。11月15日には福島県議選がありますが、与党の支持率回復、共産躍進という流れは変わるのでしょうか。

NHKによりますと、自民は4議席減らして27人、民主は2議席減らして5人、維新は1議席減らして1人、公明は現有議席を維持し4人、共産は倍増し8人。社民は3議席減らして1人。元気の会は議席を確保できませんでした。無所属は11人から13人となりました。

選挙戦では、共産党は安全保障関連法の廃止を前面に訴えました。一方、自民公明はほとんど同関連法には触れませんでした。県議選で民主や社民が現有議席を割ったのは、支持率が落ちている国政の影響もあるのではないかと思われます。共産以外に、特別、与党への対抗軸を示せていないことを表れでもあります。

どの新聞やテレビの世論調査を見ても、安倍内閣の支持率は回復傾向にあります。また、政党支持率も自民が上昇、民主が下落。共産微増という傾向です。地方選で大きな争点がない場合は、国政のムードをそのまま反映することがあります。今回もそうだったのではないでしょうか。

現在、国政の変化があるとすれば、維新の分裂騒動くらいです。しかし、維新は関西以外の地方選挙でそれほど影響力はありません。維新は都市部以外はほとんど議席はありません。そのため、維新の動向で地方選挙が変わることはほとんどないでしょう。

ただ、今回の特殊性といえば、被災地での原発、東北電力女川原発の再稼動の是非も県議会での議論が本格化します。東北電力が17年4月以降の再稼動を目指している中、30キロ圏内(緊急時防護措置準備区域、UPZ)に含まれる遠田(定数1)は、反原発を鮮明に打ち出した無所属新人が当選しました。

九州電力川内原発の再稼動は、地元同意手続きで、立地自治体鹿児島県と薩摩川内市に限定しました。しかし、共同通信のアンケートでは、UPZに入る160自治体のうち、立地自治体に限定する方式を「妥当」としたのは35自治体のみでした。反原発の議員が当選したことで、議論が活性化される可能性があるでしょう。

安保関連法が成立後、共産党は野党共闘を訴えています。民主や維新が消極的なため、現実的ではありません。過去と現在の主義主張を乗り越え、安保反対の一致点で共闘できるかどうかが、来年夏の参院選の唯一の争点です。自民党内でも「反安倍」は声が大きくありません。

ちなみに、1993年には宮沢内閣が不信任となり、細川政権が誕生します。このときは、自民党内が分裂し、小沢一郎氏が不信任に賛成。新党結成という与党側の紛争がありました。現在のところ、党内紛争はありません。また、細川内閣は、非自民非共産政権でした。共産党アレルギーを気にしなくてよかったのです。

その意味では、安倍内閣に対抗するには、保守層内の「非安倍」層を取り込む必要があります。かつてイタリアでは中道系の政党と左派系の政党、合わせて8政党が協力し合いました。「オリーブの木」と言われています。もっとも勢力のあったのは左翼民主党(旧イタリア共産党)でしたが、首相候補に経済学者を据えたことで、共産主義のイメージを払拭させることに成功しました。その意味では「野党共闘」だけでなく、首相候補も大切だと思われます。

共産党の志位和夫委員長は、反安保関連法の一致点で「国民連合政権」を提唱しています。これまでの共産党の政権構想は、大企業や財界支配をうちやぶる一方で、資本主義体制内での改革を実行する「民主的改革」でした。

しかし、今回のその路線転換であり、当面の課題として安保関連法廃案で一致する勢力との統一戦線を組もうとしています。しかし、選挙の顔である「首相候補」を打ち立てない限り、有権者にイメージを使えることは難しいのではないでしょうか。そうしない限り、自民公明現有維持、共産躍進、議席を減らす民主・維新・社民、という構図は続くのではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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