開かれた図書館のあり方 | NewsCafe

開かれた図書館のあり方

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日曜日にTBS系列で映画「図書館戦争」が放映されました。月曜日には、映画の続編が公開されるのに合わせて、ドラマ特別企画として「図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ」が放送されました。図書館には、資料収集などの自由をうたった「自由宣言」が実在しますが、表現規制を強める法律ができたあとに、武装して図書を守るという架空のストーリーが展開されるものです。

「図書館戦争」は有川浩氏の小説で、「図書館戦争」のほか、「図書館内乱」「図書館危機」「図書館革命」の4巻があります。舞台は2019年の日本。表現を規制するための「メディア良化法」ができて、武力による制圧を含む取り締まりができるようになるのです。そうした検閲に対抗して、図書館側は「図書館の自由法」を作ります。その中で、図書を守るための武装組織ができるのです。図書をめぐる"戦争"が起きる、空想ながらも興味深い内容です。

この映画が流れていたとき、愛知県小牧市では、新図書館建設に関する住民投票の集計が行われていました。同市は図書館の運営を指定管理者制度で利用する計画があります。中心市街地の活性化を含めた駅前再開発を踏まえ、運営にはTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と図書館流通センター(TRC)の共同事業体があたるものです。

CCCが運営に関与する佐賀県武雄市図書館では、10年以上前の公認会計士受験本などが蔵書に入っていたことから、「在庫が押し付けられた」と批判が上がっていました。武雄市や神奈川県老名市でのCCC運営の図書館では、Tカードが利用者カードとして使えたりします。貸し出し情報は記録されないということですが、漏洩される可能性は未知数です。

こうしたことから、市民グループ「小牧の図書館を考える会」も建設費の高さ(42億円)を含めて問題視。白紙撤回を問う住民投票条条例案を直接請求しました。市議会文教委員会や本会議では否決されました。しかし、賛否を問うかたちの、議員提出の条例案は可決しました。そのため、日曜日に市議会議員選挙とともに住民投票の実施したのです。結果、計画の賛否は、反対が過半数となりました。

図書館の問題について、住民を巻き込んで議論するのは歓迎すべき問題です。私は新聞記者のとき、主に学校図書館のあり方を取材していました。岡山市や倉敷市は先進地ですが、地域によっては司書がいなかったり、図書館に鍵が閉まっています。こうした点は学力の問題にもつながります。公共図書館だけでなく、学校図書館ももっと話題になってもよいと思っています。

民間業者が関与する「指定管理者制度」を利用している公共図書館は多数あります。紀伊国屋や丸善などの大手書店も関与しています。その意味ではCCCだけの問題ではありません。民間活力の導入による経費節減の意味はありますが、長期間の勤務が保障されず、司書の専門性が活かすという点では不十分だと私は感じています。

図書館は、いろいろな書籍、資料、情報が集まる場所であってほしい。そこに特定の団体や企業の思惑が反映されてはなりません。ある立場の書籍を購入する際は、その反対の立場から書かれた書籍を入れてほしいと思っています。また、松本サリン事件のときに松本市中央図書館が、サリンによる殺人を題材にした小説を、説明がないままに貸し出しを一時ストップさせたことがあります。開かれた図書館であればあるほど、図書館としての姿勢について十分な説明が求められると思います。

最近では、海老名市立図書館では、タイの性的なサービスを提供する店を紹介した記述がある「タイバンコク夜遊び地図」など3冊が問題視されました。市教委では、貸し出しを中止しました。この本は都内の図書館でも蔵書して入っていますが、これまで問題となっていません。市教委は「選定基準内」としながらも不適切と判断しましたが、この判断は疑問が残るところです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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