中1死体遺棄事件から見えること | NewsCafe

中1死体遺棄事件から見えること

社会 ニュース
大阪府寝屋川市の中学一年の男女2人の遺体が発見されました。死体遺棄の疑いで逮捕されたのは、寝屋川市に住む男(45)でした。男は、東日本大震災に伴う原発事故があった福島県内で、除染作業員として勤務していました。帰省中の犯行ではないかとみられています。この事件からポイントがいくつか見えてきます。

8月13日夜、寝屋川市の中学一年生、平田菜津美さん(13)が、隣接する高槻市の駐車場で見つかりました。21日夜、平田さんの死体遺棄容疑で男を逮捕した。逮捕前に、柏原市の山林に立ち寄っていたが、そこで平田さんと一緒に行方不明となっていた星野凌斗さん(12)の遺体が発見された。二人の遺体ともに粘着テープが巻かれていました。

寝屋川市は、琵琶湖から大阪湾に注ぐ淀川沿いにあるベッドタウンです。寝屋川市駅は京阪電鉄という大阪と京都を結ぶ私鉄沿線の駅です。男は住んでいたのは寝屋川市ですが、出身地はその北隣の枚方市でした。星野さんが遺体で発見された柏原市は寝屋川市からやや遠いですが、国道170号線沿線であり、平田さんの遺体が発見された高槻、関係した3人が住んでいた寝屋川の両市と同一線上にあると言えます。車を運転している人から見れば、日常の行動の範囲内ということになります。

◆中1死体遺棄事件から見えること

男を特定できたのは寝屋川市駅前や立ち寄ったガソリンスタンド、駐車場などにあった「防犯カメラ」の映像がヒントだったようです。ただ、犯罪捜査には役に立ちましたが、「防犯カメラ」は、犯罪の抑止策としては役に立ちませんでした。川崎市の中一殺害事件のときも、「防犯カメラ」は、捜査上の役には立ちましたが、抑止の道具にはなりませんでした。今回は遺体が見つかっていたため、足取りを追いやすかった面がありますが、防犯カメラは決定的な場面を映していません。

防犯という意味で考えれば、交番勤務の地域課捜査員を増やすべきではないかと思います。寝屋川市駅前には交番がありましたが、2人が徘徊していた商店街と、駅を挟んで逆にあったようで、死角になっていました。今年6月、寝屋川署地域課の巡査長(49)が、交番業務で知り合った50代の女性の自宅を勤務時間中に訪問し、わいせつな行為をしたとして懲戒処分になっていますが、こうした署員では言語道断です。

最近の交番は複数勤務のところでさえ、夜間には誰もいなくなることも珍しくありません。これでは、交番のよさが半減してしまいます。昼までさえも、警察署に行っても融通が利かないことがありますが、夜間は勤務している警察官が減り、現行犯でもない限り、なかなか動いてくれません。

いずれにせよ、交番の役割をもう一度、見直す必要があるのではないでしょうか。

また、男は過去にも似たような犯行をしていました。13年前の2002年3月、寝屋川市内の路上で男子中学生(14)に「道を教えて」などと声をかけて車に乗せて、手錠をかけ、現金1500円を奪った疑いで逮捕されています。また、複数の男子高校生らを粘着テープで縛って、監禁した疑いでも捕まっています。

手口も今回の事件と類似しています。ただ、その結果は今回のほうがより重大な結果になってしまいました。かつては強盗や監禁でしたが、今回は死体遺棄をした疑いになっています。当然、警察は殺人も視野に入れて捜査しています。本人は「同乗者がやった」などと供述し、否認していますが。

昨年度版の「犯罪白書」によると、再犯率の検証をしています。初犯で強盗した者で、同種重大再犯は、満期釈放の場合13.6%だが、仮釈放の場合は6.7%と減少する。今回のような異種重大再犯は、満期釈放の場合37.0%、仮釈放の場合は25.5%となっている。

再犯防止の取り組みは、国をあげたものになって3年が経ちました。犯罪対策閣僚会議が「再犯防止に向けた総合対策」を策定したのです。まだ3年しか経っていないと言えるかもしれません。男が以前に逮捕されたのは13年前。再犯防止の取り組みが本格的になされる前です。男には具体的な再犯防止策が適用されていなかったのです。

難しいところですが、再犯防止策が練られていない時期に出所した人たちに対して、今からでも適用できるようにできないかを考えなければいけません。もちろん、限られた予算ですので、加害者の再犯防止よりも、被害者のケアのほうに充実させてほしい気持ちもあります。しかし、再犯防止も同時にしていかなければ、新たな被害者が出てしまいます。

最後に考えてほしいことがあります。家に居場所がない子どもたちの存在です。遺体で見つかった二人は、今回の事件前夜から当日朝まで、寝屋川市駅前の商店街でぶらついていたことが防犯カメラでわかっています。また、平田さんは簡易テントを持ち出して、「野宿」を繰り返していたとも言われています。こうしたなんらかの理由で家にいられず、深夜に徘徊してしまう子どもたちは平田さんだけではありません。

しかし、青少年保護条例などで深夜の遊戯施設(ゲームセンターやカラオケボックスなど)は、子どもたちは立ち入り禁止になっています(都道府県によって、その時間や適応年齢が変わっています)。そのため、今回の二人のように、外でぶらつくか、出会い系サイトなどで泊めてくれる人を探すしかなくなります。昼間であれば、様々な遊戯施設がありますし、児童館に行くとか、図書館に行く、という選択もなくはありませんが。

かといって、児童相談所の一時保護が利用できるほどの虐待を受けているわけでもなかったり、あるいはその証拠を提示できる状況ではなかったりします。その意味では、深夜の路上の子どもたちは、エアポケットのような存在なのです。だからこそ、犯罪者が目をつけたりしてしまいます。夜回りをしているボランティアの人たちもいますが、常時しているわけではありませんし、「帰宅を促す」だけだったりします。

深夜の路上の子どもたちの居場所は「路上」そのものであるため、犯罪に巻き込まれることや、場合によっては加担してしまうリスクがあるのです。そうした子どもたちの「居場所」をどう作っていくのかも課題の一つではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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