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原発ゼロ、2年で終焉

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九州電力は11日午前、川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市久見崎町、89万キロワット)の原子炉に装てんした核燃料157体の核分裂を抑える制御棒を抜き、原子炉を起動しました。午後11時ごろには、臨界に達しました。

川内原発は、原子力規制委の新規制基準に適合した初めての原発。認定された翌10~11月、地元議会や市長、県知事が再稼動に同意しました。

2013年9月に関西電力の大飯原発の3、4号機(福井県)が定期検査で停止て原発ゼロが続いていましたが、1年11ヶ月ぶりに、原発ゼロが終わることになります。東日本大震災に伴う東京電力・福島第一原発事故以降は、再稼動は初めて。2号機も2カ月後に再稼動される予定です。

地元紙の南日本新聞が実施した世論調査(5月5日発表)では、再稼動に「反対」「どちらかといえば反対」を合わせると、前年調査に比べると、2.8ポイント増えて59.5%を占めました。一方、「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答したのは、2.4ポイント減らして、36.8%でした。つまり、単純に賛否を問えば、反対が多くなっています。

賛成理由は最も多いのが「雇用、経済活動、地域の活性化維持に不可欠」が55.2%です。「再生可能エネルギーへの移行まで当面必要」が52.2%となっています。地方でも原発容認派の多くは、地域経済の活性化が理由ですが、川内原発の地域でも同じことが言えるようです。川内青年会議所のアンケートでは、回答したメンバーの約8割が原発関連の仕事で、稼動停止で影響が出ています。経済に組み込まれると、それなしには地域経済は疲弊します。

反対理由は「安全性に疑問がある」がトップで54.9%、「福島の事故原因が究明されていない」が50.9%となっています。周辺住民は、安全性が確保されていないとして、再稼動の差し止めを求めた仮処分を申し立てました。しかし、鹿児島地裁の前田郁勝裁判長は、原子力規制委員会が策定した新基準に適合していることから、「不合理な点は認められない」として、却下しています。

地裁の争点のひとつは、火山対策でした。桜島がある桜島カルデラは50キロ圏に接しています。100キロ圏まで広げると、開聞岳がある阿多カルデラ、霧島山がある加久藤(かくとう)ー小林カルデラがあります。カルデラ火山の巨大噴火の可能性は低いとする九州電力の主張を追認しました。しかし、火山学者からは「科学的根拠はない」などと、事実誤認だと指摘しています。

地元の首長や議会が再稼動に同意する中で、県内の世論調査では再稼動に反対という現状があります。再稼動は当初7月上旬の予定でしたが、ずれ込みました。ただ、11日は、東日本大震災の月命日です。様々な人に刺激を与える日にしなくてもよいのではないかと思いますが、なぜ、この日を選んだのでしょうか。震災の記憶が風化しているように思えます。

避難想定も様々なシミュレーションが求められます。原発から半径30キロ圏の緊急防護措置地域(UPZ)では避難計画が打ち出されていますが、福島第一原発事故でもわかるように、風向きや地形などでそれ以外の地域でも高線量地域ができる可能性もあります。UPZ内だけを考えればいいわけではありません。

鹿児島県議会では6月、川内原発の安全対策などを調査する原子力安全対策等特別委員会を廃止した。議会運営委員会で自民、公明が設置を拒否し、賛成少数で設置はj否決されました。常任委員会で対応することになりますが、主体的に議会でコントロールすることを自民、公明が避けたように見えます。

もちろん、原発容認か、脱原発かを単純に選挙などで問うことができませんが、住民投票は可能かもしれません。ただ、原発容認は、その地域で生活する人たちの生活を成り立たせる意味もあります。そのため、将来の危険性はあるかもしれませんが、目の前の生活を選択するかもしれません。いずれにせよ、原発が地域に必要かをきちんと吟味するには、地域経済を成り立たせなければならないと思います。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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