中学生自殺:職員集団としての評価は? | NewsCafe

中学生自殺:職員集団としての評価は?

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「氏(死)んでいいですか?」

担任との「生活記録ノート」にこう書いていた岩手県矢巾町の中学2年生の男子生徒(13)が電車にはねられ、死亡しました。自殺とみられています。また、同じノートには、「殴られたり首を絞められたり悪口を言われた」と記していたとも報道されています。記述が事実であれば、亡くなった生徒はいじめをうけ、自殺を考えており、それを担任に伝えていた、ということになります。SOSは届かなかったということなのでしょうか。

男子生徒は5日午前7時半ごろ、JR東北線矢幅駅(矢巾町)で電車にはねられ、まもなく死亡が確認されました。遺書があったかどうかの報道はありません。ただ、報道によれば、先の記述のように、いじめがあったことをほのめかす内容が書かれています。他にも「体操着や教科書がなくなった」「もうつかれた」などと書かれていましたといいます。

「氏んでいいですか?(たぶんさいきんおきるかな)」との記述は、亡くなる一週間ほど前の6月28日に書かれたものでした。翌29日には「もう市(死)ぬ場所は決まっているんですけどね」と、死をほのめかしていたのです。決意が強まったように読めます。

この男子生徒の性格傾向がわからない段階ですので、自殺の動機について断定はできません。しかし、いじめと思われることを書いているのは4月以降ということですので、進級した時期からでしょう。しかも6月以降は特定の生徒を名指ししていたということです。友人関係の悩みがあったことは確実で、死を考えるほどだったことから、いじめかどうかも重要ですが、29日段階でどのようなケアをしていたのかが知りたいところです。

文部科学省のいじめの定義は2006年に変更され、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」であり、「起こった場所は学校の内外を問わない」としています。もちろん、けんかは除かれますが、ノートの記述を読む限りでは、けんかの範囲を超えて、いじめに該当するのではないかと思われます。

岩手県がいじめが多いというわけではありません。文科省による児童生徒の問題行動等の調査によると、岩手県は1000人あたりの認知件数は6.0で、全国平均の13.4と比べると、多い方ではありません。

ただ、児童生徒の自殺は、近年、増刊傾向にありました。2013年は240人で、2000年を超えてから11年と13年は200人を超えました。中学生に限れば、13年は63人で、15年ぶりに60人を超えました。

理由としては、「不明」が最も多く、51.3%(中学は50.3%)ですが、「家庭不和」が11.7%(中学は15.9%)、「父母等のしっ責」は7.1%(同12.7%)、「学業不振」は7.5%(同11.1%)、「友人関係(いじめをのぞく)」は6.7%(同12.7)、「いじめ」は3.8%(同11.1%)など。しかし、いじめ自殺は、小学校(0.0%)や高校(1.2%)に比べると、突出しています。中学校でのいじめは、自殺につながるリスクを考えることが必要になります。

大津市のいじめ自殺を契機に、2013年6月、いじめ防止対策推進法が制定されました。これにより、学校内でいじめ防止の組織を作ることが義務づけられました。しかし、校長は7日夜の緊急保護者会のあと、ノートのやりとりについて「担任から聞いていない」とコメントし、いじめがあったどうかを把握していないということです。

一方、学校の説明では、担任が生徒間のトラブルを認識していたが、「双方から話を聞き、問題が大きくなることはないと判断した」といいます。いつ、どのように判断したのかはよくわからないが、仮にトラブルは治まったとしても、生徒の精神状態のケアはどうしていたのか。いじめやトラブルの渦中でなければ、自殺のリスクは低いと考えたのだろうか。だとすれば、認識が間違っていることになります。

生徒の死後、担任は病欠しているといいます。もちろん、担任のケアも必要です。しかし、生活連絡ノートに死をのほめかすほどの精神状態だったことの認識を担任はどこまで学校内で共有しなかったのでしょうか。この生徒の自殺を防げなかったことの職員集団としての評価までしなければならないでしょう。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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