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若年層の自殺とネット

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日本の年間自殺者は98年の金融危機以前の数字に戻りました。警察庁によりますと、2014年の自殺者数は2万5427人で、前年に比べて1856人減りました。97年の自殺者数2万4391人とほぼ同水準になったのです。

ただ、内訳は変化しています。年代別では60代がトップで4325人。「60歳以上」だった項目が「60歳代」「70歳代」「80歳以上」に分けられた07年以降で見てみますと、ずっとトップだった50歳代が減り続け、11年には60歳代が上回りました。

また60歳代の次は40歳代が多く4234人でした。40歳代が50歳代を上回ったのは2年連続です。50歳代のほうが40歳代よりも自殺者が多かったのは86年から12年まででした。バブル崩壊の兆しがあった前後から50歳代の自殺者数は増えてきたことを意味しています。

金融危機による自殺者数の増加の背景は、それまで住宅ローンをはじめ、借金をしてでもいつでも返済が可能だという社会風潮から一転、経済不況になったためです。いわば、一定の財産を構築しようとした人たちが不況の波にのまれてしまったかのようです。しかし、多重債務対策が効果があったのか、最も経済の影響を受けた50代男性の自殺者は急激に減っていきます。

一方で、若年層の自殺はなかなか減少していない傾向にあります。もちろん、自殺者全体が減っているため、40歳代より下の年代も減ってはいますが、50歳代の自殺者数の減少から見れば、減少が鈍いのです。

数年前、自殺対策を取り組む官僚が「中高年男性の自殺はわかいやすいが、なぜ若者が自殺をするのかはわからない」と言っていたのを思い出します。

とはいえ、ただ手をこまねいているわけにもいきません。そのため、自殺予防総合対策センターが「若年者の自殺対策のあり方に関する報告書」を作成しました。ようやく、若年層の自殺について、研究を始めたといったところでしょうか。ただ、気になる記述があります。「自殺サイト研究」の箇所です。

「自殺サイト利用の影響を検討した最も信頼できる研究は、自殺サイトの利用が自殺予防的な影響を持たず、自殺誘発的な影響を有することを示唆している」「インターネット上で簡単に触れ合うことができる匿名他者に自殺念慮を打ち明け相談をすることは、多くの場合、死にたい気持ちを低くするどころか逆に強める結果となってしまう」

私はこれまで自殺サイトのユーザーを取材してきました。もちろん、この研究のように「死にたい気持ち」を強めた結果になった場合もありますが、「生きたい気持ち」が芽生えたり、「死にたい気持ち」を低めたユーザーも多かった印象があります。どのような自殺サイトかを想定をせずに、一面的に言い切ってしまうのは、同意できません。

加えて、自殺サイトの管理人がどのようなスタンスで開設しているのかによっても、サイトの雰囲気が変わってきます。なかには、きちんと悩みに答え、場合によっては実際に会いに行く管理人もいます。その一方で、自分が誰かと死にたいからサイトを作ったという管理人もいたりします。

もちろん、研究が指摘するように「死にたい」気持ちを強める結果になる多くのユーザーもいました。しかし、サイト内でどのようなコミュニケーションが行われたのか。また、ユーザーがネットでのコミュニケーションとは関係ないところでどのようなライフイベントがあったのかを検討しなければならないと思います。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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