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「人を殺してみたい」という供述から

社会 ニュース
1月27日午後、愛知県警は、名古屋市昭和区のアパートに住む19歳の女子大生を殺人の疑いで逮捕しました。顔見知りの女性(77)をおので殴るなどして殺害した疑い。女子大生は容疑を認めているということです。女性を殺害した理由は「人を殺してみたかった」というのです。

報道によれば、女子大生は昨年12月7日昼ごろ、名古屋市千種区の無職、森外茂子さんの頭をおので数回なぐるなどして、殺害した疑いが持たれています。1月27日午前、風呂場の洗い場に服を着たまま倒れている森さんの遺体を、訪問した警察官が発見しました。森さんの夫が、帰宅せず、携帯電話にも出ないことから県警に相談していたといいます。

宗教の勧誘でのトラブルが報じられていますが、接点はここのようですが、殺害に至るまでの経緯については、どんな事情があったのかはわかっていません。

ただ「人を殺してみたかった」という供述は、昨年7月26日、長崎県佐世保市の女子高生が同級生を殺害し、バラバラにした事件でもありました。加害少女は「人を殺してみたかった」「遺体をバラバラにしてみたかった」と供述していました。

「人を殺してみたかった」という供述をする犯人は、1967年6月の幼女殺害事件でもありましたので、特に「目新しい事件」というわけではありません。しかし、実際に起こってみると、日常生活を送っている通常の人であれば、理解不能だったりしますし、「殺したいから殺した」となれば、いつ自分が被害者になるのかわからないため、恐怖することでしょう。

特に2000年は同様の事件が続きました。5月1日、少年が下校中に見知らぬ民家に侵入し、女性札殺害し、夫にも傷害を与えた「愛知県豊川市主婦殺人事件」、5月3日の入院中の少年が外泊中に、牛刀を持って乗り込んだ「西鉄バスジャック事件」、5月12日、神奈川県大船駅付近を走っていた電車内で男子高校生が「誰でもよい」としてハンマーで殺害した事件がありました。特に、豊川市主婦殺人事件は「人を殺すという経験をしてみたかった」などと動機を話していた。そこから触発されて、西鉄バスジャック事件が起きます。

ちなみに、この3人の加害少年は、1997年の神戸連続児童殺傷事件の加害少年と同じ年齢であり、かつては「14歳問題」とか「17歳問題」と呼ばれた世代でもありました。2008年6月の秋葉原通り魔殺傷事件の被告も同じ年齢です。因果関係があるわけではないでしょうが、因縁めいた世代となってしまいました。

さて、私もかつて「人を殺してみたかった」と思ったことがある少年少女のインタビューをしたことがあります。動機としては家族問題や学校問題が多かったように思いますが、漠然とした将来への不安感が背景にあった子どももいました。しかし取材した少年少女たちは、実際には殺人(未遂を含む)をしたことはありません。もちろん、いわゆる悪ガキたちの中には、窃盗や万引き、強盗、脅迫などの罪を犯した人はいましたが、やはり、殺人は一線があるようです。

「人を殺してみたい」と供述した少年少女は精神鑑定にかけられることが多いのです。そして、なんらかの「人格障害」や「発達障害」、あるいは「統合失調症(かつての精神分裂病)」を指摘する医師も出てきます。一方で、病気を否定する医師もいたりします。私たちは、こうした犯罪が起きたときに、わかりやすい「物語化」(正常な精神状態ではなかった)と「分断化」(正常でなければ仕方がない。我々の問題ではない)をしたがります。そのため、病気のほうが、ある意味、安心したりします。

もちろん、直感的に「人を殺してみたい」と思う被疑者に対して拒絶反応が出ても自然なことかもしれません。なるべくなら、そんな感覚を遠ざけたい。怒りを覚える人もいることでしょう。しかし、単純に「分断」させてしまうことは、事件が「わたしたちの社会」に内包する問題を隠してしまうことになりかねません。「人を殺してみたい」という感覚を持っている人がいるということは、その当事者の個性の問題も捨てられませんが、その感覚を表出してしまった環境にもなんらかの要因が隠されている可能性があります。

逮捕された女子大生のツイッターと指摘されたアカウントは、かつて母親を殺害しようとした女子高生が使っていた薬の名前です。プロフィールには、「名古屋大学理学部一年(今ここ)→名古屋大学大学院→自宅警備員→刑務所→拘置所」とあり、将来、人を殺すことを予想していたかのようになっています。

そのアカウントでは12月7日17時15分、「ついにやった。」とつぶやかれています。事件はこの日の昼ですから、殺害後のツイートということでしょうか。その二日前には「(在学している大学)出身死刑囚ってまだいなんだよな」、11月23日には「夢の中での◯◯◯◯(自身の姓)は人殺しでした」と意味深なつぶやきがなされていました。4月3日には「逮捕される夢みた。怖かった」とありますが、それが現実のものになってしまいました。

こうした事件の場合も、加害少女のパーソナリティに焦点がいくことでしょう。しかし、環境要因も見逃せないことがあります。佐世保市で女子高生が同級生を殺害した事件でも、加害少女や少女を取り巻く家庭環境のみならず、精神科医や児童相談所などといった、いわゆる専門職の振る舞い方の問題も指摘されました。精神医療や精神保健、児童福祉、学校教育などのあり方も問われていると思うのです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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