イスラム国・人質事件をどう解決? | NewsCafe

イスラム国・人質事件をどう解決?

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ジャーナリストの後藤健二さん(47)と、すでに拘束されていた湯川遥菜さん(42)の日本人二人が、オレンジ色の服を着せられ、ひざまずいています。その二人の間には、 「イスラム国」(IS)のメンバーと思われる黒ずくめの男がナイフ(一部報道ではモザイクがかかっています)を持って立っています。黒づくめの男は身代金を要求。72時間以内に支払わなければ、殺害すると予告してきたのです。

ISの男は動画の中でこう話しています。

「日本の総理大臣へ。日本はイスラム国から8500キロ以上も離れたところにあるが、イスラム国に対する十字軍にすすんで参加した。われわれの女性と子どもを殺害し、イスラム教徒の家を破壊するために1億ドルを支援した。だから、この日本人の男の解放には1億ドルかかる。それから、日本は、イスラム国の拡大を防ごうと、さらに1億ドルを支援した。よって、この別の男の解放にはさらに1億ドルかかる」

安倍首相は17日、エジプト訪問中に、外交・安全保障に関する政策スピーチの中で、IS対策として、イラクやレバノンなどに2億ドル(約240億円)の支援を行うことを表明しています。内容としては、人道支援やインフラ整備など非軍事分野ということです。IS側にとってはこれが「十字軍」に見えたのしょうか。要求する2億ドルは同じ額となります。

ただ、英訳ではどうなのかという分析もあります。前衆議院議員の三谷英弘氏の「なぜ日本がISの戦いに巻き込まれたのか」(BLOGS)は興味深いです。スピーチの英訳を直訳すると、「これからトルコとレバノンの支援を行う。ISと戦う国々に、人的能力・インフラ支援のために2億ドルを供与する」となっています。これでは、十字軍と見えても仕方がないかもしれません。

恥ずかしい話ですが、私は後藤さんの存在をこのニュースを聞くまで知りませんでした。後藤さんは大正大学で4年間、紛争地域の子どもたちについて臨時講師として話をしていた経験があるようです。また、2歳まで仙台市で過ごした経験から、日本ユニセフ協会の記録員として東日本大震災の被災地にもたびたび訪れていたようです。

また、朝日新聞によると、昨年10月末、愛知県内で紛争地域の子どもたちをテーマに講演が予定されていました。「海外出張に行く、29日午前中に帰国する」とのメールが22日に関係者に届きましたが、その後、連絡が取れませんでした。

さらに、河北新報によると、昨年12月6日にもシリアの取材報告会が仙台市内で予定されていましたが、主催者が打ち合わせのメールを11月中旬に送ったが、返事がなかったといいます。

後藤さんは昨年10月、ネットのニュースレポートでシリア現地リポートをいくつかしています。NHKや民放にもたびたび出演していました。自身の最後のツイッターは昨年10月23日。NHKで放送されるレポートの告知でした。

後藤さんは10月下旬に、トルコ国境からシリアに入ったとみられています。シリアに入る前に、ISの拠点とされるシリアのダッカに向かう映像が残されています。その中で後藤さんは「非常に危険なので、何か起こっても私はシリアの人たちを恨みません。何が起こっても責任は私にあります。日本のみなさんもシリアの人たちに何も責任を負わせないでください。必ず生きて戻りますけどね」と話しています。

後藤さんがシリアに入った理由は、「自由シリア軍」に拘束された湯川さんを探すためだと言われています。シリアの取材中に知り合い、現地の司令官幹部の通訳を頼まれたと言われています。ただ、このタイミングで湯川さんを探しに行った理由についてはわかっていません。

殺害予告動画を見たとき、何かの違和感を抱きました。わかりやすいものとしては3人の影の向きです。向かって右にいる湯川さんだけが方向が違います。私はこれは合成なのかもしれないと思ったのですが、影の向きはカメラとの位置関係によって変化するため、これだけをもって合成とは言い切れないことを検証する人がネット上ではいました。

また、風によって服が揺れますが、その揺れた方によって、合成の可能性をいう議論もありますが、ことの動画の真偽は合成という根拠があいまいな以上、動画は本物だという前提で考える必要があります。IS側は、安倍政権の中東政策を問題にしています。安倍政権の政策の良し悪しは別として、このような予告によって政策変更をすることはないでしょうし、すべきではないでしょう。と同時に、人命救助のためには、あらゆる手段を時間が許す限りしてほしいものです。

身代金を支払うという選択もゼロではないでしょう。1977年、ダッカでの日航機のハイジャック事で、日本赤軍は獄中メンバーの引き渡しを要求しました。当時の福田赳夫首相は「一人の命は地球よりも重い」と述べ、「超法規的措置」という言葉を残しました。このときの犯人は日本人だったため、最悪、国内問題とすることもできなくもありません。また当時と世界情勢も違います。

今回は、中東で支配地域を広げて、一定程度の「国づくり」をしているISが相手です。身代金を支払ったことが明るみに出れば、日本政府は非難の的になりますし、同じような事件が起きるたびに、犯人側が身代金支払いの期待値を上げてしまいます。一方、交渉に失敗し、殺害された場合も、拘束された2人が自由意志でシリアに入国したとはいえ、安倍政権は一定の非難は浴びる可能性もゼロではありません。

安倍政権は、問題解決の結果とその結果をどう見せるかが大切になってくるでしょう。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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