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ネット解禁で選挙はどう動く?

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選挙活動でインターネットが利用できるようになって、2回目の国政選挙となりました。
2013年4月、改正された公職選挙法によって、第23回参議院議員選挙(13年7月4日公示、21日投開票)から、一定の規制のもとで、選挙運動が解禁になりました。
インターネットは選挙にどのように影響しているのでしょうか。

公職選挙法の改正により、ウェブサイト、ブログ、掲示板、SNS、動画共有サービス、動画中継サイトなどでの選挙活動が一般有権者でもできるようになりました。
このとき、ウェブサイトなどには電子メールや返信フォーム、ツイッターのユーザー名など連絡手段を表示する義務があります。
しかし、電子メールでの選挙活動は候補者と政党等に限られています。SNSや通信ソフト・アプリのメッセージ機能は、ウェブサイト利用に含まれるため、一般有権者も利用ができます。

ネット選挙が解禁されたことで、あるテーマに関心を持つ人たちがつながりやすくなりました。どの候補がどんな政策を訴えているのか、がわかりやすくなったのです。
もちろん、これまでも、候補者の事務所に行ったり、選挙公報を見ることで、候補者の訴えを把握することができました。
ただ、そうした積極的に情報を得ようとしなくても、情報が入手できるようになりました。

こうした情報を入手しやすさが、若者の投票率をあげたのか?というと違います。
前回の参議院選挙の投票率は全体では52.61%。20代は33.37%。平成に入ってからもっとも低くかった第17回(全体が44.52%で、20代は25.15%)よりは多かったのですが、
第15回(全体65.02%、20代は47.42%)には遠く及びません。これでは、若者施策を政治が重視するわけがありません。

とはいえ、若者の投票率が上がらないのは以前からもそうですが、他の年代と比べて政治とのつながりが薄いこともあるでしょうが、住所地と有権者として登録されている地域とがずれていることもあるとは思います。

ネット選挙解禁といっても、投票はネット上ではできません。また、情報を得ようとする人ほど、世論調査で把握できてしまいます。
情勢分析を見るだけでも「当選者はほぼ決まっている」と思っても仕方がなく、「自分一人が一票いれても、大きな情勢に変化を与えられない」と思ってしまうのかもしれません。
いくらネット選挙解禁で「政策論争」になりやすくなったとはいえ、まだまだ「地盤、看板、カバン」が影響します。

ただ、都市部ほど浮動票があります。
しかも、投票者が住所地によって限られ、かつ当選者が一人せず、民意を集約する小選挙区よりも、選挙区が広く、
同じ選挙区で複数の候補者が当選する大選挙区(あるいは中選挙区)や比例代表の場合は、民意を反映するシステムですので、何かの流れがあれば、当選可能性があがることになります。

たとえば、参議院議員の山本太郎氏が典型かもしれません。前回の参議院選挙では、東京都選挙区で4位で当選しています。
その前に行われた衆議院選挙では小選挙区ということもあり、次点となり、落選していました。
山本太郎氏は、衆議院選挙のときから、反原発、反TTPを主な争点にして、知名度も手伝って、それらの票を集めることができました。インターネットと連動したつながりができていたと思います。

これまで低かった20代、30代の投票率がですが、10ポイントくらい高くなれば、投票した人の年齢構成を変えることができますので、それなりの影響力も持ちます。
当選する人が変わらなくても、政策の中身が変わるかもしれません。

さて、今回の衆議院選挙では、「みんなの党」が解党しました。渡辺喜美氏が立ち上げた政党ですが、渡辺氏はもともと自民党です。
いまの自民党では期待できないと思っていた有権者が、「よりましな保守」の選択肢でした。

各社の世論調査をみると、自民党が圧勝する情勢です。数字の上では、「みんな」に投票した無党派層は「自民」に流れている計算になります。
もちろん、「アナウンス効果」によって「圧勝してはまずい」と思った人たちは「第2党が強くないと」と民主に投票するかもしれません。
一方で、「勝ち馬効果」もあり、「どうせ勝つなら」と自民に投票する人もいるでしょう。

「民意の反映」ではなく、「民意の集約」を重視した小選挙区を中心とした選挙制度では、今回のように大きな「風」が吹かない場合、ネット解禁の影響はほとんどありません。
しかも小選挙区中心では、3割の得票率で、7割の議席数を与えてしまいます。やはり、「民意の反映」を重視した比例区中心の選挙制度のほうがよいのではないかと私は思うのです。

[ライター渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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