ヤジ都議は会派離脱だけでいいの? | NewsCafe

ヤジ都議は会派離脱だけでいいの?

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6月18日の東京都議会本会議で塩村あやか都議(みんなの党)が一般質問をしていたとき、「早く結婚したほうがいいんじゃないか?」とのヤジがあった。この件について塩村都議がTwitterでつぶやいたことで拡散。海外メディアも報道するなど、大きな社会問題になった。ヤジの発言者・鈴木彰浩都議(自民)は塩村都議に謝罪しすることになった。

そもそもヤジが飛んだのは、塩村都議が妊娠や出産に関する東京都のサポートを質していたときだった。「早く結婚したほうがいいんじゃないか」とのヤジが飛んだ。塩村都議はヤジが聞こえた方向を向いた。そこは最大会派・自民党の議席だ。その後方から聞こえたという。所属会派のみんなの党では声紋分析をする勢いだった。自民党の国会議員でも名乗り出るようにとの声が多かった。

結局23日になって鈴木彰浩都議が名乗り出た。当初はメディアの取材に対して「自分ではない」と言っていた鈴木都議だが、会見では「早く結婚したほうがいい」と「産めないのか?」などのヤジが取り上げられていたために「自分の発言と他人の発言が様々に報道される中で、場を逸してしまった」と言い訳をしていた。であるならば、「早く結婚したほうがいい」は自分が言ったが、「産めないのか?は言ってない、などと釈明をすればよかった。なぜそう言わなかったのか。

なぜ、あのようなヤジを飛ばしたのか。理由としては「私自身、少子化、晩婚化の中で早く結婚していただきたいと思い、あのような発言になったが、したくても出来ない人への配慮が足りませんでした」と話した。たしかに素朴な考えであり、一般都民の発言なら仕方がない面もあるかもしれない。しかし、都議会は議論し、政策を立てて行く場だ。なぜ結婚できないのか/しないのかをじっくり考えることへの提起なら建設的だ。

しかし、建設的ではないどころか、結婚しないカップルの間に生まれた「非嫡出子」の権利が、結婚した夫婦の間に生まれた「嫡出子」との権利が同等になった今でも、結婚にこだわり続けるのではれば少子化問題に一石も投じることができない。「早く結婚すればいいじゃないか」というのは、古い家族観からの発言だ。もちろん、ポリシーとして古い家族観がよいのだと主張するのであれば、そこは断固として曲げなければいい。それも曖昧で、信念が感じられない。

「私がこの場でお詫びした方がいいと思ったのは、私が発した言葉で大変なご迷惑をおかけしてしまったという私自身のけじめ」。鈴木都議は会見でこう言った。しかし迷惑をかけたこと自体が謝罪の対象なのか。女性差別やセクハラだと指摘されることへの認識はまったくないように感じられた。

また、メディアの取材には「議員辞職に値する」と言っていたが、会見では「初心に帰って、今後も頑張らせて頂きたい」などと述べ、議員を続けることを明言した。ただし、自民党の会派は離脱した。なんのための離脱なのかもはっきりしない。誰に対するけじねめなのか。結局、自民党も他の発言(産めないのか?)の主は特定しない。これでは鈴木都議をとかげのしっぽとして切り捨てるだけだ。

自民党はリスク管理がまったく出来ていない。自浄作用がないと見られても仕方がない。ただし、東京都議会は有権者にとってそれほど注目してない。だからこそ、チェックの厳しい目が行き届かない。そのため、三年後の選挙には忘れられてしまっていると、自民党は思っているのかもしれない。今回の顛末が鈴木都議の会派離脱だけでいいのか?有権者は試されてる。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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