児童ポルノ改正案成立 | NewsCafe

児童ポルノ改正案成立

社会 ニュース
「児童買春・児童ポルノ処罰法」の改正案が18日成立しました。今回の改正で、単純所持が禁止されることになりました。
つまり、児童ポルノを持つことを禁じたのです。
さらに、「自己の性的好奇心を満たす」目的で、自分の意思で所持した場合は1年以上の懲役または100万円以下の罰金になります。
この罰則規定は一年間の猶予危難があり、その間に破棄すれば罪に問われません。しかし、この法律の問題点が審議の過程でも明確になりました。

今回の改正案の最大のポイントは、単純所持(持っているだけ)が禁止されたことです。
これまでも、販売や譲渡目的の所持は罰則がありましたが、自分で利用するための所持は禁止されていませんでした。
G8で児童ポルノの単純所持が禁止されていないのはロシアと日本でした。
また、ドイツは、13歳以下の「児童ポルノ」は所持が禁じられていますが、14歳から18歳までの「青少年ポルノ」は同意があれば所持ができます。
単純所持についての禁止規定がなかった日本は、ほかのG8の国々や国連から指摘をうけていました。

同法の改正は10年ぶりですが、なぜここまで改正できなかったのでしょう。
一つの理由は、児童ポルノの定義」が曖昧だったことです。
日本の児童ポルノの取り締まりの前提は、撮影時に性的虐待があったのかどうかは問われていません。
わいせつかどうかに重きが置かれています。
そのため、性的虐待があっても、顔だけを映したものは「児童ポルノ」に認定されていません。
この点は今回の改正議論でも指摘されていましたが、今回もその枠組みは変わっていません。

曖昧と指摘された中に、児童ポルノの定義のひとつに「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」
というものがありました。あまりにも対象が広いために、これまでずっと批判されてきました。
そのため、今回は「「殊更(ことさら)に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部(でんぶ)又は胸部をいう)が露出され
又は強調されているものであり」が加わりました。そのため、これまでの定義よりは狭まりました。

とはいえ、この「性欲を興奮させ又は刺激するもの」は一般人を基準にしたものです。
一部のマニアの心情を基準にしていません。かつて、交通事故や津波被害者の死体写真を集めてサイトにアップしていた児童ポルノ愛好家がいましたが、
死体を映したものは「児童ポルノ」には入りません。G8の中では、「死体」を含めている国もありましが、
参議院法務委員会で指摘されましたが、組み入れられませんでした。

また、児童ポルノ愛好家がFacebookやTwitter、SNSで集めた「児童の水浴び写真」があったとします。
「児童の性的な部位が露出され又は強調されているもの」があれば、児童ポルノになるのでしょうか。実はこれは曖昧です。

仮にトリミングして、「児童の性的な部位を強調」したとしましょう。
しかし、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」は一般人を基準にしたものです。
そのため、3歳の水浴び写真で「性的な部位を強調」したとしても、当てはまらない可能性があります。
一方、その被写体が高校生の場合で「性的な部位を強調」したものは、内容によっては当てはまる可能性もあります。
このように、一般人を基準とすると非常に曖昧なものになるのです。

児童ポルノがパソコンにあった場合も争点になります。「ゴミ箱」に捨てただけでは「破棄」になりません。
また、復元ソフトが入っている場合も、復元する意思が推認されれば処罰対象となります。
クラウドサービスを使って、保存している場合も所持になります。
これまでクラウドサービスを使って写真を保存している場合は、その中に「児童ポルノ」があるかどうかが問題になります。

さらに問題になるのは、児童ポルノが合法だった時代に入手した写真集や雑誌です。
入手時点では「自己の性的好奇心を満たすため」でしたが、入手後にその目的を失った場合は、処罰対象にはなりませんが、
それをどのように立証するのかが問題になります。
入手の経緯や他の写真集の入手状況、点数などが総合的に判断されるようですが、
仮に起訴されなかったり、裁判で無罪になったとしても、逮捕される可能性はあるのです。

ポルノかどうかにこだわるでのはなく、性的虐待の記録かどうかで取り締まるべきと、インターポールも指摘しています。
性的虐待について処罰する法律は日本にはまだありません。児童虐待防止法では保護者に指導することを定めているだけです。
性的虐待を包括的に処罰する法体系をつくるべきではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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