同級生殺害事件から10年 | NewsCafe

同級生殺害事件から10年

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佐世保・同級生殺害事件から10年が経ちました。2004年6月11日、長崎県佐世保市の大久保小学校で、6年生の御手洗怜美さん(当時12歳)が同じ学級の少女にカッターナイフを使って殺害されたのです。インターネットの日記サイトを小学生も書いていることが話題となりましたし、そのサイトでのトラブルが原因か?とも言われたことを記憶しています。この事件から私たちは何を学ぶことができたのでしょうか。



この事件では、被害者となった御手洗怜美さんが毎日新聞佐世保支局長・御手洗恭二さんの娘だったことも注目される一因でした。被害者の親となった記者は、記者会見に臨み、心境を話すことになったからです。いつもは伝える側ですが、一転して、伝えられる側となったのです。記者としてどう振る舞えばいいのかは悩みどころです。少年事件のため、加害者の情報はほとんど入らないからです。

そもそも何がトラブルの原因なのかも曖昧でした。事件当初は、日記サイトで交流していたことから、ネットでのトラブルが原因か?とする報道もありました。もちろん、ネットだけのトラブルで殺害までいくことはありません。日常の中に事件の根は隠されていました。とはいえ、命を奪うほどのトラブルだったのかはいまだにわかりません。

ただ、この事件は一つ示唆したものがあります。それは身近な人のネットトラブルについてです。この事件まで、ネット・コミュニケーションについて、文部科学省は「見知らぬネットの相手に気をつけよう」とのトラブル防止策が中心でした。しかし、この事件で「身近な人とのネットトラブル」がクローズアップされたのです。ネットでトラブルが起き、怒りの感情が出た場合、身近な人のほうが怒りの感情が継続するといった調査結果もこのころ出ました。

ネットの中でのトラブルがネットで完結する場合、二度とそのトラブルの相手と交流しなければ、怒りの感情は次第に薄らいでいくことでしょう。もちろん、実名や実住所を知っていれば別ですが、ハンドルネーム(ネット上で使う匿名のこと)だけの交流であれば、トラブルの相手と接しなければいいのです。しかし、身近な友だちであれば、ネットでのトラブルは、日常生活まで継続してしまう可能性があります。だとすれば、怒りの感情が続いてしまうのです。

朝日新聞(5月31日)には、元同級生のインタビューが掲載されていました。

「彼女は(送致先の児童自立支援)施設から出たそうですが、どこで暮らしているかは知りません。いま、幸せなのか苦しんでいるのか分からないけど、「ちゃんと反省してる?」って聞きたい。いくら反省しても御手洗さんは戻らない。でも、せめて毎日思い出して手を合わせていてほしい」

事件が同級生同士を引き裂き、お互いの感情を知ることはありません。「修復的司法」という言葉もあります。当事者同士が話すことがケアになるといった考え方ですが、日本ではそうした法整備はなされていません。

一方、弁護士ドットコム(6月1日)には、被害者の兄がシンポジウムで登壇した様子が掲載されていました。以下の感情は、父である御手洗恭二さんには初耳だったようだ。事件当時家族もなかなかお互いに感情を知ることはないようです。

「父に直接感情をぶつけることはなかったですが、たとえば、遺体が届くまで、親父さんは記者会見をやっていたんですよ。そういう姿をテレビで見て、「こいつ、何やってんだ?」と正直、思ったんです。こういうとき、家族といるのが普通なんじゃないの、と。親父さんの仕事柄、そういうことをやらなければマズいんだろうというのは察していたんですが、最初は、怒りのほうが先だった」

事件から10年。まだまだ事件当時者同士の感情を知ることがないようです。しかも、兄の感情を聞いたのは、新聞記者でした。カウンセラーではなかったのです。「俺の話を聞きたいという人を、ずっと待っていたわけですから」。こうしたとき、カウンセラーはなかなか入りにくく、記者が話を聞いてくれたことで癒されたというのです。これは事件だけでなく、震災の現場でもよく聞いたことです。

私もふとしたことがきっかっけで犯罪被害者の話を聞くことになったことがあります。そして、記者が話を聞くことで癒される。こうした現実があることも知ります。取材そのものが役に立つこともがある実態を示す意味では、意味がある行為だとは思います。しかし、そんな記者が現れるのは偶然であり、タイミング次第です。システムとして、犯罪被害者の家族へのケアが充実する方向で考えなければなりません。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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