親がとった最後の手段・・・開成高校生殺害事件(前編) | NewsCafe

親がとった最後の手段・・・開成高校生殺害事件(前編)

社会 ニュース
「NewsCafeユーザーによる犯罪コラム」第三回
開成高校生殺害事件
「なぜ開成に通う息子は暴れたのか?」

・「子供の将来を悲観」…追い詰められた親の喘ぎ

今月3日、千葉県白井市で、71歳の男が娘の顔に座布団を押しつけ意識不明の重体にさせたとして、殺人未遂の疑いで逮捕された。38歳の娘は10年以上前から激しい痛みを伴う難病を発症しており、自宅療養中だった。事件は、都内で働く容疑者の長男に「娘を殺してしまった」と電話があったことから発覚する。
容疑者は警察の調べに対し「病気の娘がかわいそうで将来を悲観した」と供述しているという。苦しむ娘を病から解放するための、最も迅速な手段…父親がその考えと戦う日々の苦悩は、察するに余りある。胸の痛む事件である。
「親の子殺し」は珍しくない。身勝手な親に振り回されて飢える子供、暴力を受ける子供、灼熱の車内で渇く子供たちの事件が連日報道される昨今だ。しかし、こうしたケースと前述の事件に大きな隔たりがあることは、誰の目にも明らかである。
「我が子を手にかけざるを得なかった親の責苦」という点で、30年以上前に起こった「開成高校生殺害事件」を思い起こす人もいるかもしれない。"名門進学校に通う自慢の息子"を父親自らが絞殺した事件は、当時のメディアを大きく騒がせた。

<名門進学校生の"心の闇"と暴力行為>

1977年10月30日未明、東京都北区に住む飲食店経営の男が、寝ている長男の首を帯で絞め殺害する事件が起こった。その後、男は妻と心中を図るが果たせず、翌31日に自首。殺害された長男は16歳、名門・開成高校の2年生であった。
「東の開成、西の灘」と評されるほどの進学校に通う息子となれば将来は有望、男にとっても自慢だったに違いない。それがなぜこのような事態になってしまったのか…そこには殺害された少年による家庭内暴力という、大きな要因があった。
少年は元来おとなしく内向的、小学生当時から成績は常に上位であった。「試験、勉強が好き」という、子を持つ親なら誰もが羨む優等生だったのである。両親は息子の勉学に対しそれほど熱心ではなかったものの、彼の成績に引きずられるようにして教育に力を入れ出す。有名進学塾に通わせ、家庭教師をつけるころには、周囲の人間に「開成へ進学しては」と勧められるようになっていた。少年自身も「開成以外の学校には行かない。開成こそ自分に合った学校だ」発言し、見事に私立開成中学に合格する。
しかし全国から秀才が集まる名門校において、彼の成績は自身の期待ほど伸びなかった。3年間の中学校生活を経て開成高校へ入学する頃には、最下位に近い成績を取るようになっていく。
少年は引きこもりがちになり、両親への態度も荒くなる。「自分の鼻が低いのは、父親が鼻の低い母親と一緒になったからだ」など、外見のコンプレックスを暴言に変え、また学歴のない両親を蔑んだ。やがて自室の柱や家財に当たりだしてから、両親に暴力を振るうようになるまで時間はかからなかった。

<"おとなしい優等生"を歪めたものは何だったのか>

少年の両親は悩み、精神病を疑って病院へ連れていくが、医師は「これは精神病ではない。わがまま病である」と診断し、入院を懇願する両親に「その必要はない」と断った。また別の病院では、父親の「治りますか」という必死の問いに対し、医師は「私は予想屋ではない。(少年は)自殺するか、犯罪者になるか、どちらかだ。自殺はできないだろうから、犯罪者になるだろう」とまで言われたという。
薬や注射、電気ショックによる対処療法の甲斐もなく、少年の家庭内暴力は悪化してく。そして思い詰めた父親は、ついに凶行に及ぶのである。
息子を犯罪者にさせないため、自殺させないため…両親は究極の選択へと追い込まれた。眠る息子の首に帯をかける瞬間、父親は"できのいい子"だった我が子の、違う未来を思い浮かべたかもしれない。親である自分たちに落ち度があったのか、息子の人生の結末は本当にこの道しかなかったのか、そもそもなぜ息子は暴力を振るうようになってしまったのか…。母親はその後「(事件は)自分の教育のせい」との遺書を残して自殺している。
NewsCafeでは「なぜ開成に通う息子は暴れたのか?」というテーマで、ユーザーのコメントが募集されたようだ。当記事では賛同の多かった意見や印象的なコメントを紹介していきたい。
※コメント総数…469件

「なぜ少年は暴力を振るうようになったのか」というコメント募集テーマの考察に加え、少年の父親がとった行動についての意見も多く寄せられた。まずは賛同の声が多かったコメントから。

■親から見れば、親の言うことを素直に聞いて、勉強して、テストの点数が良ければ「いい子」だから褒めてやる。子供は親に褒めてもらえるから、素直に、勉強して、点数を上げようとする。子供は親の目に「いい子」と映るように行動しているだけ。子供は、それがうまくいかなくなると、つまり成績が上がらなくなったり受験に失敗したりすると一気にキレます。親には、勉強しろとウルサク言った覚えはなくとも、子供は無意識に親に褒めてもらえる行動をしているのです。だから、成績だけを褒めるのではなく、友達を助けたこと、約束を守ったこと、お年寄りに親切にしたこと等々も褒めてやらないとダメです。[50代男性]

■どこでボタンが掛け違ってしまったのだろう。子供が悪くなってしまうのは、やはり親の責任でもある。けれどどの親も子供を悪くするために育ててはいない。きっと親の育て方の他にも、子供が墜ちていく要素は様々にあるのだと思う。重要なのは子供に異変が起きた時、素早く親が対応できるかどうかなのかもしれない。[40代女性]

■じゃ、どうすれば正解だったんだろう…。お父さんがしたことは、仕方がなかったと思う。怒りの矛先が家族だからまだ良かったものの、今流行りの安易な考えでむしゃくしゃしたから等の理由で他人に危害を加えてたらと思うとゾッとする。でも、いますよ。いくらいい所の大学を出ても、世間の一般常識がわからない人って…。そういう人に限って否定されるとぶちギレます。大人になりきれてない子供ほどたちの悪いものはない…。[20代女性]


少年の両親が置かれた立場や行動に同情する意見が多かった一方で「一連の要因はやはり両親にあった」「少年自身の持って生まれた性格に問題があった」という声も寄せられた。

(続きは後編へ)

[文・能井丸鴻]
《NewsCafeコラム》
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