「2%の正義・婚外子相続問題」 | NewsCafe

「2%の正義・婚外子相続問題」

社会 ニュース
「結婚問題や子供の問題」は論じるのが難しいデリケートなテーマで、このテーマを避ける同僚も多い。それは「大多数の人たちには特段の問題意識や権利主張が無く、例外的な人たちが声高に権利の主張をする問題」であるからである。同性婚・事実婚・夫婦別姓等の論争もこのたぐいである。識者は『根底には「社会の基本的基盤を個人の尊重におくのか・社会の最小単位と言える家庭に置くのか」と言う問題があり、さらには「法律的な見方とイデオロギー的な見方が入り交じる」ので問題が複雑化するのである。最近では「結婚や子供の問題を社会的規範より個人の権利としてとらえる」と言う傾向が強くなっている…』と言う。

そんな中で最高裁・大法廷(最高裁の全判事が参加する)は『結婚していない男女の間に生まれた非摘出で父親が子供として認知した子供「婚外子」の遺産相続分を摘出子の半分と定めた民法の規定は法の下の平等を保証した憲法に違反かどうか?と言う家事審判の特別抗告審で「民法の規定は違憲」と全裁判官が一致の判決』を下したのである。決定の概略は『家族のあり方に対する国民の意識が多様化し個人尊重に・婚外子の差別撤廃が各国で進んでおり国連も勧告している・事情の変化を考慮すると民法の規定は平成13年には違憲だった・今回の決定は過去の相続には適応されない』である。簡略化すると「現在の相続の規定は生まれる環境を選べない子供に不当なペナルティーを課す物である」との判断であり、政府も「立法的な手当が必要」との方向を出している。

識者は『今回の違憲判断を多くの新聞が社説等で支持しているが、ネット上では「違憲判断に反発する書き込み」が相次いでいる。「結婚制度の崩壊・ますます非婚化が進む・婚外子をつくること自体がおかしいのに正当化するのか・親の介護をしないのに遺産だけ同じか…」である。感情的な書き込みも多いが、婚外子も同様に扱う民法改正に反対してきた自民党内の意見に通じるものがある。政府の前向きの意向に対して「伝統的な家族観」を重視する自民党の腰は重く、改正が早期に実現するかは見通せないのが現実である』と言う。辛口の識者は『現在婚外子の数は全体の2%未満と見積もられている。突き詰めると今回の判決は「2%の救済を重く見る立場」である。しかし現在の日本は「法廷婚の尊重・一夫一妻制度」を規範に国の秩序が保たれ・国民の価値観となっている。最高裁の言うほど「家族の在り方の多様性が進んでいる」とは見えない。また家族の概念は基本的には「その国の文化に根差すもの」であり、国連が…と言う問題ではないのではないか。高齢化社会の中で「家庭とは…・家族の義務とは…」が問われる中で、突然「相続と言う財産分与の局面だけに婚外子問題が出現」と言う状況に違和感を持つ向きは多いのではないか。相続には「負債の相続」もあるし、さらには婚外子の母親の権利をどうするかと言う問題もある。いずれにしろ相続だけでない広い論議が必要である』と慎重な取り組みの必要性を述べている。さらに最高裁の意見を聞きたいものである。

[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]
《NewsCafeコラム》
page top