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実効性のある自殺ホットラインを

社会 ニュース
マイケル・ジャクソンの娘パリス・ジャクソンが自殺未遂をし、ロサンゼルスの病院に搬送されたことが話題となりました。オーバードーズと手首に切り傷があったとも報道されています。15歳の少女に何があったのかはわかりませんが、オーバードーズとリストカットでの自殺未遂は、私が取材している若者たちの自傷行為や自殺未遂と良く似ています。

オーバードーズは、薬の種類や量によっても違うものの、一歩間違えば、死に至ることがあります。特に処方箋の量が日本よりも多いとも言われているアメリカでは、危険な行為でもあります。また、自傷行為を繰り返すうちに、最初は「死にたい」わけではなかった感情が、「死んでしまってもかまわない」という思いに変わることもあります。

そのため、自傷行為だからといって、簡単に見過ごすと一大事になります。本気だったのかどうかに注目するメディアもありますが、本気度は、自殺問題を考える上では、それほど問題ではありません。

一方、パリスは手首を切った後に、自殺ホットラインに電話をしているとも言われています。芸能情報サイトTMZが情報筋の話として伝えているのは、以下のような証言です。

「本当に死にたいのなら、自殺防止ホットラインに電話する意味はありません。そんなことをしても、自宅に救急車を向かわせるだけなんですから」
「死ぬために解熱鎮痛剤をのむ飲む人なんていますか? パリスは注目してほしかった。そして死ぬ前に救急救命士が到着することを願っていたからこそ、ホットラインに電話をかけたんですよ」

この話がどこまで信用できるかは別として、自殺ホットラインと救急の窓口が一元化されていることに驚きます。日本では、自殺ホットラインに該当する行政窓口はほとんどありません。もちろん、一部の自治体で電話相談の窓口はあります。また「いのちの電話」など民間窓口はあるものの、匿名電話であり、電話で話をするだけです。電話を切った後に、その人が自殺をするかどうかのフォローアップまではしていません。

WHOの国際比較(2012年)によると、日本の自殺率(09年)は10万人あたり24.4人で8位。一位はリトアニア(同年)で34.1人、2位は韓国(同年)は31.0人。アメリカ(05年)は11.0人。日本の半分の自殺率ですが、アメリカは実効性のある自殺ホットラインがあるのです。

新潟日報が伝えたところでは、新潟県は、「精神科救急情報センター」を設置する方針を明らかにしました。新潟県は自殺率が高水準で、精神科の相談や救急患者を受け入れる医療機関の調整をセンターが行なうようにします。すでに、40の都道府県に設置されているのですが、パリスが利用したような自殺ホットラインとして機能するのかどうかはわかりません。

各都道府県のセンターのホームページを見ても、開設している時間帯はまちまちです。ただ、話を聞いてほしいときには利用ができるかどうかも曖昧です。12年度は警察庁の発表で15年ぶりに年間自殺者が3万人を下回りました。しかし、若年層は増加傾向にあります。そんな中、ホットラインの充実は求められているのではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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