児童ポルノ法改正案提出! | NewsCafe

児童ポルノ法改正案提出!

社会 ニュース
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、いわゆる児童買春・児童ポルノ処罰法の改正案を、自民・公明が提出することになりました。現在の法律では定められていない「単純所持」の違法・処罰化を設ける方針だ。日本維新の会も共同提案に入る見通しとなっています。

改正案は、児童ポルノを所持することを禁止とします。現行では提供や、それを目的とした製造や所持、運搬、輸出入の場合は処罰されますが、改正案は「自らの性的好奇心を満たす目的」も加えました。その場合、一年以内以下の懲役、または100万円以下の罰金を科すという内容です。

同処罰法は1999年に、性的搾取や性的虐待から子ども(18歳未満)を守ることを目的に、議員立法で成立しました。そして、他の法律や国際動向を見た上で、改正がなされるような検討事項が含まれています。そのため、成立以来、改正について常に議論がなされてきました。

主な論点は三つです。

1)児童ポルノを持っているだけ、つまり「単純所持」を違法とするか

2)禁止されるべき児童ポルノに、漫画やアニメ、CGなど表現物を含めるか

3)児童ポルノの定義をどうするか

2008年、自民・公明が与党だったとき、「児童買春児童ポルノ禁止法見直しプロジェクトチーム」(PT)があり、改正案を大筋で合意していました。

一、何人もみだりに児童ポルノを所持し、保管してはならない=単純所持の禁止
一、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持・保管した者は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金に処する=処罰規程
一、インターネットプロバイダー(接続業者)は、児童ポルノ被害がインターネットの利用で容易に拡大することにかんがみ、捜査機関への協力や被害拡大を防止する措置を講ずるよう努める=児童ポルノの被害拡大防止
一、(付則)児童ポルノに類する漫画やアニメなどの規制と、インターネットを利用した児童ポルノの閲覧を制限する措置は(1)法改正後の施行状況(2)児童の権利擁護に関する国際的動向(3)関連する調査研究と技術開発の状況-などを勘案しつつ検討、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

これに対して、当時の民主党は「単純所持・処罰化」に合意は出来たとしても、そもそもの「児童ポルノ」の定義について見直しを求めていたのです。民主党の独自の骨子案によると、現行の3条2項は、

他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

となっていますが、民主案では、

性器などをことさらに強調するなどして示す児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの

というものです。また、3条3項にある「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」は削除するとしています。

その上で、単純所持の処罰対象を1)対価を支払って取得、2)性的目的など所持、に限定する。つまり民主は「収得罪」の新設を主張したのです。1)があることにより、処罰対象は、自民・公明案よりも狭くなっています。

双方の主張には隔たりが大きく、与党側が自民・公明の基本合意を元に法案を提出ことになったが、結果、衆議院は解散し、議論が止まっていたのです。今回の自民・公明の改正案は、2008年当時の合意事項を踏まえて、

1、適用上の注意規程の明確化
2、児童ポルノ所持等の禁止
3、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持の罰則化
4、インターネットの利用に係る事業者の努力規定
5、被害児童の保護のための処置を講ずる主体、責任の明確化

となっています。そして、その他の中には、検討事項として

児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、疑似児童ポルノ等)と児童の権利を侵害する行為との関係性に関する調査研究

インターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限(ブロッキング)に関する技術の開発の促進

が盛り込まれています。ほぼ2008年の自民・公明の合意事項そのままです。

もちろん、目的に関しては誰もが納得することで、議論の余地はありません。しかし、その方法や内容についてはしっかり見ていく必要があります。現行では、違法とならない児童ポルノもあるのです。たとえば、精液をかけられた子どもの写真が、現行法では適用されません。しかし、明らかに性的虐待なのです。

何が児童ポルノなのでしょうか。ある創作物が児童ポルノかどうかを検討することよりも、児童虐待の記録かどうかに焦点を絞ったほうがいいのではないか。そういう声もあります.これまでにも、東京都青少年健全育成条例でもクローズアップされた、表現の自由を制限するのか否か、という問題が再び浮上しそうです。

また、イギリスやアメリカでは、「裸で浴槽につかる幼児の写真を見たフィルム現像業者が当局に通報。母親が尋問された」「非常に古い、違法化される前に撮影された写真の所持を犯罪とみなされた」「FBIがおとり捜査をして、自ら偽装リンクを作り、クリックした人を強制捜査した」などのことがありました。警察権の乱用をどう食い止めるのかも争点です。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
《NewsCafeコラム》
page top