被災地で低下するも、若者層で増える「自殺率」 | NewsCafe

被災地で低下するも、若者層で増える「自殺率」

社会 ニュース
東日本大震災後、被災3県(岩手、宮城、福島)をはじめ、東北地方の男性の自殺率が極端に下がったことが、山形県地域医療対策課の大類真嗣主査の調査で分かりました。読売新聞(3月26日)が伝えました。

記事では、震災復興に伴う雇用増や契機改善が影響しているとのことだ。震災前の08年3月~11月2年と、震災後の11年3月~12年2月で自殺率(10万人あたりの自殺者数)を比較すると、男性は、福島を除く東北5県と、福井、和歌山、長崎で6以上も減った。福島も3以上6未満の減少でした。

ただ、女性の自殺率は変わらないとのことです。女性は精神的な要因が大きく、大規模な震災後には自殺のリスクが高くなる可能性があると指摘されています。震災後数年は、自殺率が下がることが、阪神大震災でも新潟中越地震のときの調査でも分かっています。しかしその後は、自殺のリスクは増加します。

一方、NHKニュース(3月24日)が、若者の自殺が増加傾向にあり、NPOが主催する自殺防止対策を考える意見交換会があったことを取り上げました。そのニュースの中で、内閣府の調査で、全国の自殺した大学生や高校生の数が去年初めて1000人を超えるなどの増加傾向にあると伝えています。

昨年は年間自殺者が15年ぶりに3万人を割りましたが、自殺の増減は単純ではく、階層や地域によっても変わるのです。減少したのは「自殺対策」の関連もあるとの指摘もありますが、はっきりとした要因はきちんと検討しなければなりません。

ある研究では、同じ年代であった場合、大学生と大学生以外の人では、大学生のほうが自殺率が低いのです。「大学」という環境が、自殺を防止する何らかの理由があると言われています。たとえば、問題にぶつかったときに逃避することは、大学以外の環境よりは容易です。仕事がないという悩みも進行形のものではありません。こうした理由で、大学生の自殺率は低くなります。

そんな中にあって大学生の自殺増加は、大学生数が増えたこと、就活の悩みやうつ病などの精神疾患の増加といった要因もあるでしょう。近年では20代をはじめ若者の自殺率は増加傾向にあります。そうした荒波の中に大学生もいるのです。

もちろん、そうした傾向とは別に、自分自身、身近にいる大切な人の自殺のリスクがあるのかどうかはきちんと把握することが大切です。また、大切な人が亡くなった場合、悲しいなどの感情(グリーフ)が生まれ、向かい合うことになるのです。と同時に、自殺リスクを高めると言われています。

悲しみ、後悔、葛藤、安堵、怒り....様々な感情がうまれるものです。その反応をグリーフと呼びます。グリーフを共に考え、支えてくれる人との出会いは大切です。しかし自然に出会えるとは限りません。その出会いを作る出すのがグリーフ・サポートの仕組みです。私も関わりのある、社団法人「Live on(リヴォン)」が4月から宮城県石巻市で「いのちの学校」を始めます。

様々な感情、もしくは感情がわき上がらない反応があり、どれもが自然な反応なのです。それは、その人なりの人生のプロセスの中で起きるものです。「いのちの学校」のような機会は、そうした反応との向き合い方の学びとなり、自分の中のグリーフへの気づきとなるでしょう。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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