震災2年目の「14時46分」を過ごした場所 | NewsCafe

震災2年目の「14時46分」を過ごした場所

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3月11日は東日本大震災から2年が経ちました。私は地震発生時刻の14時46分は、岩手県釜石市鵜住居の「鵜住居地区防災センター」内で迎えました。この場所は、2年前、地域の多くの人が避難をしたものの、津波に飲み込まれました。釜石市の調査では、100人以上がこの「防災センター」で亡くなっています。私は震災後、何度もこの場所を訪れています。1年目の14時46分もここにいました。

この日の午前、「防災センター」では、鵜住居地区の犠牲者追悼式が行なわれました。参加者は数百人はいたことでしょう。何度も訪れている場所ですが、センター内にこれほどの人がいたのを見たことがありません。この人数ほどではないですが、震災当日も、この半分ほどはこのセンター内にいたと思うと、当日の津波襲来前の様子を想像することができました。

ちなみに、「防災センター」を訪れるのは1ヶ月ぶりでした。2月11日の月命日のときも、地震発生時刻から2時間以上は、ここにいました。隣には「鵜住居幼稚園」の園舎もありました。鵜住居幼稚園では当時、60人の園児が通っていました。地震が起きた時間には、4人の園児がいました。このうち2人が、迎えにきた保護者に引き取られたのです。そのため、園児は2人が残されたのです。

一方、職員は、及川牧子園長(享年56)と幼稚園教諭の小沢葉子さん(享年52)、山崎伴子さん(56)、臨時教諭の片桐理香子さん(享年31)、疋田菜津子さん(享年26)がいた。津波警報が鳴るなかで、4人の職員と2人の園児が隣の防災センターへ逃げたのです。4人の職員は亡くなりましたが、園児2人は住民によって助けられました。

この地域の津波避難所は防災センターではなく、山側にある鵜住居神社や常楽寺です。しかし、「津波の日」である3月3日の避難訓練では、参加率を上げるために、「防災センター」が"模擬の"避難先として選ばれていました。ただ、近所の人でも、公式な避難所に避難した人もいます。なぜ、幼稚園では、公式な避難所ではなく、防災センターへ避難することになったのでしょう。防災センターでの悲劇については、第三者委員会で検証することになっています。

その幼稚園の園舎では2月24日、お別れ会が開かれました。その後、3月1日から解体作業が行なわれました。解体前、園の玄関には「ここだけは残してください」等と書かれた文字があったが、解体後、その部分もありませんでした。市関係者によると、時計等の園内にあったものは保存しているといいます。園舎が解体された跡地は何もありません。写真は12年5月11日に撮影したものです。防災センターの二階の窓から見た園舎ですが、今では見ることができません。

震災遺構は地域の人にとっては「忌まわしい記憶」でもあり、いつまで保存するのかは議論があるところです。宮城県気仙沼市のJR鹿折唐桑駅前に、津波で流された大型漁船がありますが、この保存を巡っても賛否が別れています。この「防災センター」も、"遺族の要望を受けて"取り壊しの予定となっていますが、遺族の要望は一様ではありません。「なくなると寂しい」との声も聞きます。「取り壊し」と聞いたからと、何人もの出身者がこの日訪れていました。

それにしても、今年の「3月11日14時46分」は、メディアの取材が少なかったように思います。昨年はテレビも複数の会社がリアルタイムで伝えていましたが、今年は一社のみでした。また、週刊誌も、震災特集はほとんどしていません。「去年の震災特集の号は、売れなかった」という話も聞きます。そのため、「震災記事は売れない」というイメージを固定化させたことも一因でしょう。

私はこの時間、防災センター2階に設置された祭壇の前で黙祷をしました。黙祷をした人たちの写真を撮るつもりでしたが、今回ばかりは、写真を撮るのを迷いました。黙祷をする人の写真を何枚も撮り続けてきた私でしたが、なぜか、その写真を撮るのを躊躇しました。この震災取材では時折、そんな心境になったりします。なぜ、私が震災取材をするのか。自問自答や葛藤の現れだと思います。

そんな中、私は「月刊 潮」や「週刊女性」で、児童と教職員あわせて84人の犠牲者を出した大川小学校の遺族の話や震災遺児・孤児のことを書きました。商業メディアは売れなければ意味がありませんおで、仕方がありません。しかし、記事を掲載していただけたメディアもそうですが、よそ者で、「フリーライター」という肩書きの私に、体験や思いを話してくれている被災者には何よりも感謝しています。そのため、その好意を無駄にしないためにも、今後も継続的にアウトプットしていきたいと思いました。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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