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中国サッカーと経済

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今や世界でも一目置かれる存在となった中国。日本と中国といえば政治の世界でも良好な関係とは言いがたい。尖閣諸島問題では大規模の反日デモで現地の日本人を震え上がらせた。中国と聞いていいイメージを持つ日本人は非常に少ないのではないだろうか。

そんな中国で今注目を集めているのがサッカー。豊富な中国マネーを駆使しアジア勢の勢力図が少し変わるかもしれない。

中国には「中国サッカー・スーパーリーグ」という国内リーグが存在する。レベルとしては上位チームはアジアでもトップレベルにあると思うが、全体で見れば日本、韓国と比べると明らかに低い。さらには八百長問題など解決すべき問題は数多くある。中国サッカーは「不動産リーグ」と呼ばれるほど不動産会社をスポンサーに持っているクラブが多い。

ここが中国サッカーの1番の問題だ。サッカーよりも自社の宣伝に力を入れている。例えば広州恒大というクラブは地元大手不動産の許家印会長が買収後、次から次に欧州や南米から大物選手を獲得している。地元紙によると勝利給も破格で今季のアジア・チャンピオンズリーグの初戦で勝利した際には1400万元(1億8000万円)を払ったという。

サッカー好きのオーナーであることには変わりないだろうが、チームを成長させるというよりは目先の結果のみを求めた強引な経営に感じる。クラブを企業の宣伝に使うことは悪いとは言わないが、将来を考えれば大物選手を獲得するだけでなく下部組織を充実させ若手を育成させるなどの使い道もある。これはサッカーだけにいえることではなく中国を象徴するような考え方だと思った。

ただし中国にもクラブの将来を考えている人間はいる。それが元日本代表監督である岡田武史氏が就任した杭州緑城だ。広州恒大などと比べると資金力はないが目先の結果だけでなく若手の成長を掲げる中国では珍しいクラブでもある。それが証拠に今季序盤の中国リーグでは大連阿爾濱、上海申花など強豪クラブの監督達が成績不振を理由に解任されているが、オーナーである宋衛平氏は「たとえ降格しても構わない」というほど長期的な視野を入れてクラブを経営している。(シーズン途中で勝手に主力を放出したすることはあったそうだが…)

どのスポーツでもそうだがサッカーは特に国民性が出るスポーツ。日本人の場合、真面目で規律を守ると評されるが、中国人選手の場合(すべての選手を見たわけではないが)はうまくいかなくなるとすぐに諦め、ラフプレーに走る選手が多い。岡田監督は異国の地でそんな選手達の概念を破り若手を起用し輝かせようとしている。今季の日程を終え杭州緑城は16チーム中、11位で何とか1部に残留することができた。ドロクバやアネルカなどライバルチームがビックネームを獲得する中、既存の戦力でここまで戦えたの岡田監督の手腕が大きい。

2010年には日本を抜いてGDP世界第2位まで上り詰めた中国。テレビの討論番組などで中国人が追い込まれると「中国はまだ発展途上だから」という言葉を多く聞く。しかし数値上は先進国であり世界からもそういう目で見られることを自覚したほうがいい。急激な経済発展だったことは分かるが経済と人の成長速度が反比例している。それもあって岡田監督の挑戦には非常に興味がある。岡田監督の手法が認められればただお金を使えばいいという概念はなくなり、中国サッカーは新たな道を歩くことができる。さらにはサッカー界だけはなく様々な分野にいい影響が出ると感じるからだ。異国で奮闘する岡田監督の来期が今から楽しみだ。

[執筆者:松岡慶]
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