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ブラジルから学ぶもの

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ザッケローニ体制になってから初の大敗…。欧州遠征第2戦となったブラジル戦は世界トップクラスの力を見せつけらる1戦となった。結果的に4失点という大敗を喫した日本代表。しかし点差とは別に通用した部分も多くあった。何故ここまで点差が開くのか?納得いかない部分はまだあるが、まずは試合を振り返ってみたい。

まず、スターティングメンバーを見て少なからずの驚きがあった。トップ下での先発が予想された本田圭佑がトップの位置に入っていたことだ。試合後に「ワントップというよりもゼロトップに近い形」と話していた通り、前の4人(本田、香川、清武、中村)が並ぶような形となり、流動的にポジションチェンジを行い相手に的を絞らせないことに狙いがあったようだ。

対するブラジルもほぼベストメンバー。14年ワールドカップは自国開催のためブラジルは予選が免除されている。本大会に向けてチーム力をアップさせるには親善試合しかない。ネイマール、フッキなど日本でもお馴染みの選手たちが名を連ねた。

前半が始まると日本代表はブラジルの名前に臆することなく自分達のリズムで試合に入ることに成功した。前回のフランス戦では相手のプレッシャーに押し負けていただけに、まずは上々の滑り出しといったところだろうか。もともとブラジル代表はスロースターターな傾向があり序盤に入り方に問題はなかった。前半8分には流れるようなパスワークからゴール前でボールを受けた本田が左足で強烈なシュート。これはキーパーの正面だったが、日本の長所が前面にでた場面でもあった。

しかし…。前半11分、ブラジルの左サイドの攻撃から中央のやや深い位置でボールを受けたパウリーニョが意表をつくミドルシュート。つま先で蹴ったようなシュートに川島の反応が一瞬遅れ、これがゴール右隅に突き刺さった。ここまでいいリズムで試合を進めていた日本にとっては何とも手痛い先制点を奪われる形となってしまった。

ブラジルはとにかくスイッチのオンオフが絶妙だった。ディフェンスの時もフラフラしているように見えて、ボールを奪ってからは一気に全体が加速する。このカウンターの速さはアジアでは体験できるレベルではない。特に左サイドからの動きが活発で、ネイマールとマッチアップする機会の多かった内田(前半で交代)はかなり苦労させられていた。28分にはペナルティエリア内でカカと交錯した今野がハンドの判定をとられPKに。これをネイマールがきっちり決めて2点リードされた状態で後半に向うこととなった。

後半、ザッケローニ監督が早くも動く。中村に代えて乾。内田に代えて酒井宏を投入した。フランス戦で攻撃の流れを代えた乾には今回も同じ役割を期待したと推測できる。酒井に関しては前半に日本の左サイドから攻め込まれるシーンが多かったため、内田よりもフィジカルに勝る酒井で守備の部分で安定させる狙いもあったはずだ。

しかし、後半開始早々またもピンチを迎える。後半1分、ブラジルはコーナーキックからエリア内でボールを持ったネイマールがシュート。これがディフェンスの吉田にあたりコースが変わり3点目を奪われた。圧倒的に攻め込まれているわけでもないのに早くも3失点。点を取られているのが不思議でしょうがなかった。後半29分には中央でボールを受けたカカがドリブルで切り込み4点目。この日のカカは所属するレアル・マドリードでの移籍騒動がウソのような活躍だった。中盤では終始ネイマールとのコンビで日本を困惑させた。日本はその後も反撃に出るがゴールを奪うことはできず0-4の完敗。予想外の点差をつけられ敗戦となってしまった。

ブラジルは前日会見でメネーゼス監督が「ポゼッションの向上を目指してきた」とコメントしたように、これまでのブラジルとは違う印象を覚えた。どうしても先入観として攻撃が強烈という印象を受けるが守備のレベルも相当なものだった。日本はワンタッチでボールをまわしゴール前までつなぐことはできるが、なかなか縦にパスを入れることができなかった。これは中盤のラミレスが最終ラインに入る場面が効いていたように思う。ここで日本のスペースを消していた。攻撃ではとにかく最後の「決定力」につきる。世界のトップを狙うのであればこの日のブラジルほどお手本になるものはない。決めるところで決める。当たり前のことだが、サッカー王国と呼ばれる所以を存分に発揮された。

そして日本代表について。今回は4点という差がついてしまったが試合後の本田の「負け惜しみではなく、点差ほどの差は感じなかった」という言葉が妙にしっくりきた。あの点差がつきながらブラジルが最後まで手を抜かずプレッシャーをかけてきたのは、「気を抜いたらやれるかもしれない」という思いがあったのではないか。それだけ攻めていたし、チャンスも作ることはできていた。残念ながら現時点で日本よりもブラジルのほうが個人の能力が単純に高かったという他ないだろう。

この敗戦を受けてザッケローニ監督は「到達点」を変えるつもりはないと明言。さらには本田、長友ははっきりとワールドカップで優勝を狙うという確固たる信念がある。おそらく大半の人が日本がワールドカップで優勝できるなど思っていないだろうし、こんな事を言ったら笑われるかも知れない。しかし優勝するという本気の思いがない限り何十年、何百年たっても不可能だろう。このチームにはそれだけの可能性を感じるし一人のサッカーファンとして2014年のワールドカップ優勝を本気で信じたい。この敗戦がひとつのきっかけとなることを願っている…。

[執筆者:松岡慶]
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