ナショナルフラッグの重さ | NewsCafe

ナショナルフラッグの重さ

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サッカーW杯にしろ五輪にしろ、日の丸を背負った戦いは見るものを興奮させる。
14日から東京・有明コロシアムで行われたテニスの国別対抗戦デビスカップ 日本対イスラエル。1勝2敗で迎えた最終日。国の名誉を背負っての一戦は激闘となった。最終試合で日本が敗れ、ワールドグループ残留はならなかったが名勝負だった。

エース同士の一戦となった最終日第1戦。錦織は世界ランク16位。一方セラは102位。日本の楽勝かと思えた。
事実、第1セットは6-3で錦織。しかし第2セットに入ると明らかにそれまでと違った。いつもなら決まるべきショットが左右に外れる。左のふくらはぎに痙攣が起きて、さらに猛暑と緊張でダウン寸前と言う顔つきだった。一方セラはタフな選手。錦織のスーパーショットも、ともかく返してくる。そしてちょっとボールが浅くなるとバックハンドが炸裂する。テレビで観戦していて、これは危ないと感じた。第3セットも落とす。コートサイドのレポートでは2セット目から体力が落ち、栄養補給や塩分摂取をしていると言う。第4セット。その効果が徐々に効いてくる。コートも影に覆われる。目つきが変わった錦織は2-2に持ち込む。ファイナルセット。錦織の動きも戻る。しかし相手も執拗に粘り、攻撃をかける。一進一退のまま12セット目、マッチポイントを握った錦織のフォアが炸裂し4時間31分の試合に終止符を打った。

「久しぶりに感動しました。試合後にも涙が出てきて、これは初めての経験だった。負けるのではという逆境があった分、この勝利は凄く嬉しかった。感極まりました」

2-2となった第5試合。日本は世界ランキング52位の添田。初日にセラを倒している。相手はAワイントラウブ。世界ランク200位台。
ツアーにも出場できない選手だが、初日は伊藤を撃破している。ワールドグループ復帰がかかる最終戦。緊張が目に付く添田。思いっきり攻撃してくる相手。そのバックハンドは強烈。1セット目を取られ、2セット目もタイブレークで落とす。3セット目は少しワイントラウブの動きが落ちて日本1-2に戻す。4セット目。明らかに相手の動きは悪い。第1ゲーム、添田はブレークポイントを握る。一気に反撃のチャンスと思われたときに、雨で中断。屋根が閉じられ、20分後試合は再開。ワイントラウブはこの中断で体力を回復。もとの強打者に戻った。そして日本はこの試合を落とし敗退。なんとも無念な雨による中断だった。

「国のためなら喜んで命を捧げる」

友人のイスラエルの女子高校生は平然と言う。それほどに国を思う心の強い国民だ。
この試合は2勝した伏兵ワイントラウブにやられたが、セラの粘りといい国を挙げての戦いにその強さを見た。ツアーでは上位に出ることはないが、国旗を背負うと人が変わる。デ杯では過去にベスト4の実績もある。日本も錦織は絶体絶命から、最後はトップ16の意地を見せたが、本来の調子ならもっと楽に勝てた相手だ。添田も同じ。五輪を除けばデ杯は最も歴史のある国をかけての対抗戦。日本は1921年に準優勝の実績があるが、やっとメンバーが揃ってきた。後は国を背負った気持ちをどれだけプラスに変えられるメンタルの強さだろう。それにしても久々に選手が死闘を繰り広げ、手に汗握るテニスを見たと言う充実感はあった最終日だった。

[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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