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チャンピオンの価値

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テニス4大大会の最終戦、全米オープンは10日男子シングルス決勝が行われた。アンディ・マレーがフルセットの末にノバク・ジョコビッチを破り、初のメジャータイトルを獲得。英国としてはフレッド・ペリー以来76年ぶりのメジャーチャンピオンの誕生となった。1日前の女子シングルス決勝はセレナ・ウイリアムスが4年ぶりの4回目の復活優勝。ともにロンドン五輪での金メダリストと言うのも珍しい。二人にとって感慨も一入の優勝となった。

セレナは今回の優勝でメジャータイトルは15。歴代6位になった。13個目が2010年のウインブルドン。その年は全英と同様に全豪でも連覇。圧倒的な強さを見せ、女王の座は揺るがないと思われた。しかし足の故障で8か月の治療と休養。トレーニング再開と思った矢先の昨2月、肺塞栓で緊急入院。いわゆるエコノミー症候群で、足や骨盤の静脈内側に血塊が作られ肺に飛ぶわけだが、肺動脈の血塊を取り除く手術を受け一命を取り留めた。人一倍健康には自身があっただけに、ショックは大きかった。回復し臨んだ今年の全豪では4回戦敗退。さらに全仏では1回戦で世界ランク111位の選手に敗退。4大大会初の1回戦敗退の経験となった。「最悪の気分だった。負けた後、あれほど落ち込んだことはない」と語る。しかしそこからの復活が凄い。ウインブルドン優勝、ロンドン五輪単複優勝、そして全米優勝。挫折が更なる努力を生み、進化した。「チャンピオンの価値を決めるのは勝利数ではなく、挫折から復活できるかどうかだと思う。私は何回か挫折を味わったけど、毎回そこから立ち直った。それができてとても嬉しい」。人間的にも成長し風格も見せる。円熟味を増したプレーは若手の脅威になりそうだ。

マレーはジョコビッチより7日年上。ジョコビッチはこれまで4大大会5回優勝。一方マレーは4大大会決勝進出は6回目だが、まだ栄光を手にすることは無かった。その2人の決勝戦は4時間54分という熱戦になった。第1セットから1時間27分の接戦。25分のタイブレークの末、マレーがセットを奪った。結局このセットが優勝の行方を決めた。2セットダウンからジョコビッチは反撃。2セットオールへ。流れはジョコビッチ有利化と思われた。今年からかつての王者イワン・レンドルをコーチに迎えたマレー。レンドルは現役時代、安定したバック・フォアのストロークで有名。「英国にチャンピオンを」とマレーを鍛え、安定したストロークを身につけさせた。結局この安定感とカバーリングのよさが不死身といわれるジョコビッチの体力を徐々に奪い、ついに栄冠を手にした。五輪金メダリストで全米王者。世界のトップに上ったが「4大大会以外にも、世界で1位を獲得する大会がいくつもある。その年の最高の選手に値すれば世界1位だ。ノバクかロジャーが今年最高の選手だろう」と謙虚。そこが良い。全豪・ジョコビッチ、全仏・ナダル、全英・フェデラー、全米・マレー。男子テニス界は4強時代に入った。

組み合わせに恵まれた錦織圭。今回は栄光に近づけるチャンスでもあった。しかし3回戦で敗退した。ストローク戦に持ち込めば、当代有数のポイントゲッターだが、サーブで崩されると辛い。来年はベスト8常連、再来年には栄光へと行きたい。トップへ向かう時間はあまり無いはずだ。

[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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