格差、60度の違い | NewsCafe

格差、60度の違い

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ロンドン五輪に挑む男女日本代表の壮行試合が11日国立競技場で行われた。初のメダル獲得に期待がかかるなでしこジャパンは豪州と対戦。序盤から主導権を握って得点を重ね3―0と快勝した。一方、U-23世代を主体とする男子五輪代表は、ニュージーランドと対戦。攻め続けるが決定力不足。やっと71分に杉本健が先制。しかし勝利目前の後半ロスタイムに追いつかれ1―1。苦い餞別となった。ロンドン五輪のサッカー競技は、いち早く女子が25日、男子は26日に開幕。16日に男女ともに同じ便で羽田空港からパリ・シャルル・ドゴール空港へ旅立った。

問題は同便ながら待遇に差が出たことだ。それも世界チャンピオンで、今回の優勝候補のなでしこがエコノミー。決勝トーナメント進出も危ぶまれる男子五輪代表がビジネスとあっては、「なぜ?」。協会の説明では航空券は日本オリンピック委員会がエコノミーを手配。日本サッカー協会が競技力向上のため、独自で席をアップグレードした。男子はビジネス席、女子はプレミアムエコノミー席を用意。「プロ選手で構成される男子は、96年のアトランタから五輪本番はビジネスと決まっている。女子はアマチュアだったし、体格もそれほど大きくないので、今まではエコノミーが慣例。でも今回はメダルの期待とファンの注目度も高いので、少しグレードを上げてプレミアムエコノミーシートにした」とは関係筋の話。長年続いてきたサッカー界の慣例をそのまま適用し、男女に差をつけてしまった。

五輪では確かに男子の結果のほうが輝いている。68年メキシコ五輪で日本は銅メダルを獲得している。日本のサッカー界の快挙と言われる。しかしその後は長い不振の時期を経て、93年からJリーグがスタート。その結果96年に28年ぶりにアトランタ五輪に出場。グループリーグでブラジルに勝つが3位で決勝トーナメントには進めなかった。2000年シドニーではGリーグを勝ち抜きベスト8の結果を残した。その後はGリーグ敗退が続いている。一方女子は96年のアトランタ五輪から競技が始まった。アトランタではGステージで敗退。シドニー五輪は予選敗退で出場できなかった。アテネではGステージを勝ち抜き、準々決勝でアメリカに敗れベスト8。北京ではGステージを勝ち抜き、準々決勝で中国に勝利。準決勝ではアメリカに、3位決定戦ではドイツに破れるが、メダル獲得へあと一歩と近づいた。さらに10年W杯で優勝。今回は強敵ドイツが出場できないこともあり、日本金メダルの最有力候補の1つに挙げられている。

このフライトのビジネスの座席はフラット。プレミアムエコノミーは120度。シートの角度で60度、料金で1000万の差がついた。国民の大きな期待のかかるなでしこに協会自らがこの仕打ち。さらに男子は23歳以下だが、女子は33歳の沢はじめベテランも多い。13時間ものフライトでは疲労は違うだろう。特にエースの沢は良性発作性頭位めまい症の不安を抱えながらの長距離移動。競技力向上と言うなら、なでしこ優先が筋で、配慮が足りなかった。男子代表の中で数名ぐらいはシートの交換を申し出ることも無かったのだろうか。なでしこはこれをバネにメダルを獲得し、帰路では堂々とビジネスで帰ってきて欲しい。男子もビジネスを望むならメダルは必須だろう。

[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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