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なでしこジャパンは、ロンドン五輪の初戦を7月25日に迎える。
五輪のどの競技よりも、開会式よりも早く行われるこの試合は日本中が注目するだろう。

7月9日に国立競技場で行われたオーストラリア戦との親善試合は初戦のカナダを想定していた。スコアは3-0となでしこが快勝。だが、昨年のW杯で活躍した中心選手はおらず10代の若手を中心に構成。冬の南半球から来た相手だっただけに、少々物足りなさを感じた。経験しておきたかった、息詰まるような五輪の初戦を味わうことはできなかった。

W杯や五輪などの国際大会において、初戦でなかなか本来の力を出せないのが、なでしこジャパンの特徴でもあり不味さでもある。昨年のW杯でもそうだった。格下のニュージーランド相手に、先制したがすぐに同点にされてしまった。何とか後半に1点を取って、冷汗をかきながらの勝利を掴んだ。また、4年前の北京五輪でも同じくニュージーランド相手になぜか焦った試合運びをしてしまい、ドローゲームに終わった。

なぜ初戦は上手くいかないのだろうか。佐々木監督は次のように示唆する。

「五輪は別物で、特に第1戦は魔物がいるということを選手に言われていたんです。僕はそれを知らなくて、北京での1戦目がまさにそうだった。本当に魔物がいるんですね」と、初戦ならではの緊張感が試合に影響していたという。また、ボランチで澤とコンビを組む阪口は「勝たなきゃいけないって、気負ってしまうんですかね」

昨年のW杯で優勝して以降、国内外からの注目が集まっているなでしこだけに、プレッシャーは前回五輪以上であろう。

今回の初戦はカナダだ。絶対的エースのシンクレアには要注意だ。パワフルな突破とゴール前の強さだけではなく、敵を引き付けての絶妙なパスなど、ボールさばきも巧い。シンクレアだけでなく、長身でパワー系の選手が多いのにも警戒したい。
しかも、そのチームを率いるのはジョン・ハードマン監督だ。なんと、昨年7月までニュージーランドの監督であった人物だ。

ハードマン監督はなでしこ対策を熟知している。日本のディフェンスラインの裏を付くような、ロングボールを多用してくるだろう。もちろん、なでしこのDF陣もそれをわかっているはずだ。しかし、先述したように長身のプレーヤーが多いカナダ。ニュージーランドではできなかった、高さとパワーで押されれば圧倒されるシーンもあるかもしれない。また、それまで手薄だった守備の意識を高めてきているのも、不気味だ。先日のアメリカとの親善試合で1-2と好ゲームを演じていることからもハードマン体制での成長ぶりが窺える。

「とにかく第1戦をいい形で勝ちたい。そして、選手もスタッフも金メダルを目指して邁進していきたい。自分たちのサッカーができればそれに近づくと思う。そのことを信じていい準備をしていきたい」

佐々木監督は第1戦に勝って波に乗りたいと、素直に語る。

泣いても笑っても、なでしこの五輪開幕まであと1週間あまり。
目標の金メダルへの試金石として、第1戦のカナダとの戦いがロンドン五輪のなでしこの成績を占うことになりそうだ。

[女子サッカーライター・砂坂美紀/ツイッター http://twitter.com/sunasaka1]
《NewsCafeコラム》
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