8年目の美酒 | NewsCafe

8年目の美酒

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16日、Kスタ宮城での楽天戦に10-1で勝利した巨人。交流戦で初めて優勝。しかも7年パが独占していた王座を、セが初めて手に入れたことになった。
翌日は釜田に完封されて敗れたが17勝7敗と、貯金10を手に入れ首位中日に1.5差の2位に上がった。

巨人は初回に楽天先発塩見を捕らえ、阿部の先制打などで4点を奪う。さらに2回は坂本のレフトへの6号ツーランなどで大量8点のリードを奪い試合の主導権を握った。先発のホールトン。ソフトバンクで2度の優勝経験があり、09年には優勝が決まる試合に先発しチームの優勝に貢献した。
「交流戦優勝は大きなモチベーション。自分が勝ち投手になれれば最高。低めに集めて、丁寧に投げたい」と言葉通りに、リズムのいい投球を続ける。結局7回1失点と好投し、勝利に導いた。開幕ダッシュに失敗しながらも交流戦スタート時に勝率5割に戻した原監督。「チーム状況も上向きで交流戦に入れました。その勢いを持って、素晴らしい交流戦になったと思います」と言うことで顔もほころぶ。

巨人の初優勝の要因は、なんと言っても大型戦力増強によるところが大きい。投手では17勝のうち杉内が4勝、ホールトンが3勝と計7勝を稼いだ。
一方最下位に沈んでいるソフトバンクは昨年杉内2勝、ホールトン3勝。メジャーに行った和田4勝を入れると9勝をあげた先発が抜けて8勝13敗3分。2人の存在がいかに大きかったが判る。
さらに杉内は5月30日の楽天戦でノーヒットノーランを記録。チームの絶対的なエースとしての存在感を示しチーム内の投手陣にいい影響を与えている。
同じ左腕の内海には特にそうで、その結果昨年からの連勝を9に伸ばせた。打線では村田を補強したが、これもいい結果になっている。ベイスターズ時代の村田はチャンスに弱いと言われた。しかし交流戦では先発23試合中20試合でヒットを打つ。打率も坂本に次ぐチーム2位の0.311。9日埼玉西武戦でサヨナラ打を放つなど存在感を示した。阿部の怪我で5月から4番に座ったがその重責を果たした。「後ろに阿部さんがいることが大きい」と村田自らが言うように、相手投手は勝負し、本人も後ろに強打者がいるので楽に打てる。それが好循環となっている。交流戦に関しては巨人の補強は成功したと言える。

4連戦で回る交流戦。6連戦が基本のリーグ戦とは違う戦い方が求められる。
リーグ戦では同一カード3連敗はまれだが、交流戦では2連敗はよく起こる。先手必勝で、必然的に短期決戦の戦い方になる。
一方で豪快な打線を期待するファン。このチームにはスモールベースボールはむかない。さらに実績のある打者が多く、自分のスタイルを崩さない。しかし今年は開幕から貧打にあえぎ、勝てない試合が続いた。そのときに今年から設置された連略室が相手チームの分析データを示す。勝つためにデータを試合に生かそうという空気が、コーチや選手の間に広がる。また普段対戦しない相手には、選手任せよりもベンチの戦術がものを言う。「ビッグイニングを待つ野球」から「1点を積み重ねる野球」に意識が変わった。長野、阿部にもバントをさせる。
とにかく先取点を取る。必然的に短期決戦の戦い方になる。それと交流戦が合致したのだ。
ファンが喜ぶ野球から勝つ野球への変革が8年目の美酒をもたらしたと言える。

[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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