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今は試運転中

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さすがの強心臓と言われた男も人の子。入札額を入れれば年間20万ドルプレーヤーで、メジャーでもエース中のエースが手にする年俸を背負ったダルビッシュ有。
その初登板は大乱調に終わった。1回4失点。2回にも1失点で5点取られる。早々と交代かと思われたが、3回からは立ち直り、6回途中110球を投げたところで交代した。強力打線のレンジャースは3回までに5点を取り5-5に。4回には3点追加し勝利投手の権利をプレゼント。5回2/3で8安打、5四死球。苦いメジャー初勝利を手にした。

メジャー公式戦、初打者にストレートのフォアボール。2番は三振に取るが、3番イチローに詰まらせたがサード後方へのポテンヒットを打たれる。そこからは3安打2四球で4点を失う。8番川崎には押し出しの四球の始末。とにかくこの日のダルビッシュはコントロールが定まらなかった。

「落ち着いていて周りもよく見えていたが、体が勝負に行きたがっていて、体と精神がアンバランスな状況だった。味方の打線がいいのは分かっていたので、その後は何とかゼロを並べていればチームに勝利が来ると思っていた」

試合後こう語ったダルビッシュの特徴のひとつは多彩な変化球だ。しかし1、2回はツーシームを含めた直球系のボールがほとんどだった。スピードボールはいいところに行っても、メジャーのクリーンナップははじき返す力がある。10種類近い変化球が影を潜め、コントロールも定まらない。やはり初マウンドか。全米で注目されていただけに、力も入った。さらに滑るボール。硬いマウンドがそれに輪をかけた。3回以降は投球内容を変え、3安打2死球に抑えた。

この試合は日本でも注目された。対マリナーズと言うことでイチローとの勝負が見所だった。結果は4打席3安打。完璧にイチローに軍配が上がった。

「いちばん最初にあたったチームがシアトルで、日本人と対戦したのが僕とムネ(川崎)が初めてだった。ダルもやりづらいだろうし、僕らだってやりずらい」とイチローは言う。
これから長い対戦が続く相手だけに早急に相手投手を評価するコメントは出さなかった。しかし3本目のヒットはダルビッシュをマウンドから引き下ろすことになった。同じリーグの同じ地区だけに、これからの対戦も多いことだろう。メジャーを見る楽しみが増えたといえる。

試合はレンジャーズがその後も追加点を挙げて11対5で勝ち。ダルビッシュが勝ち投手となった。ちなみにダルビッシュ獲得の資金はレンジャーズの試合の長期間独占放送権を得たFOXTVの放映権料によるものが大きい。デビュー戦を放送した「FOX SPORTS SOUTHWEST」は83年の開局以来、最高視聴率を記録したことになった。ささやかな恩返しだろうか。

初先発で初勝利。内容はイマイチだったが、何かを持ってる証拠だ。
注目された2戦目は、14日のツインズ戦に2度目の先発。6回途中までに9安打2失点で交代した。試合はレンジャーズが6-2で勝ち3連勝になったが、ダルビッシュに勝敗はつかなかった。この試合も5四死球を与え、ノーワインドアップにしたが制球は安定感を欠いた。特に交代した6回は同点に追いつかれ、なお2死満塁とした場面で降板。

「後ろの投手にすごく迷惑をかけるので悔しいなと思った」と反省したダルビッシュ。やはりダルビッシュと言えどもリーグ各チームと一巡するまでは、なかなか快刀乱麻とは行かないだろう。今は試運転中だが、今後の活躍に期待したい。

[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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