新年を迎えた被災地 新課題は「心のケア」 | NewsCafe

新年を迎えた被災地 新課題は「心のケア」

社会 ニュース
2012年になり、東日本大震災の被災地では「成人式」が行われるなど新たな決意がされるとともに、復興を支えようとする動きが出て来てきています。
一方、「心のケア」はこれからが正念場とも言われ、いまだに癒されない人たちも多いのが現状。震災直後の「悲しみ」とは違った心の段階に来ています。特に、子どもたちにどのように寄り添っていけばいいのかか課題といえます。

仙台グリーフケア研究会(滑川明男代表)は1月9日、「大切な人を亡くした子どものためのワンデイプログラム」を開きました。同会の活動は震災前から行われており、グリーフ(悲嘆)の感情を支えるのに役立ってきました。震災後は、震災遺児たちの参加も増え、これまでの経験が生かされています。

この日は20数人の子どもたちが、仙台市内の大学構内で遊んでいました。ある小学生はピアノを弾き、別の子どもたちは鬼ごっこをしたり、卓球をしています。ホワイトボードに絵を描いたり、習字をしている子どもたちの姿も…。これだけを見れば子育て支援で遊び場を提供しているかのように見えますが、これは、「大切な人を亡くした子どもたち」の心のケアをしている場なのです。この中には、震災で親を亡くした子どもたちも含まれています。

遊びの中に、子どもたちの様々な感情が見え隠れします。
ある子どもはピアノを弾いていました。スタッフの話では「これまではピアノはほとんど見向きもされなかった。もしかすると、ピアノが流されたり、仮設住宅でピアノが弾けない、ということがあるのかもしれないが、まだ何を意味しているのかは分からない」とのこと。子どもたちのどんな行動にどんなサインがあるのかを手探り状態で見守っているようです。
参加しているスタッフは、参加者が心を見つめ直す手助けをする「ファシリテーター」の養成講座を受講済み。しかし子どもたちの奥にある悲しみの感情がどのタイミングで、どのように向けられるのかは分かりません。そのため「ワンデイプログラム」が終わった後、スタッフたちでミーティングを行い、その日のうちに学びに変えているのです。ちなみに同研究会は大人を対象にした「わかち合いの会」も開いています。

また、「あしなが育英会」では、東日本大震災で保護者が死亡、または行方不明、または著しい後遺障害を負った人の子ども(0歳から大学院生まで)を対象に、返済不要の「特別一時金」を給付しています。写真は、あしなが育英会が一時金を支給した子どもの地域と人数。当初の予定額よりも多くなっていますが、予想以上に寄付が集まったことが関係しています。それだけ、震災遺児や震災孤児への関心が高まったのでしょう。

ただ、対象となる子どもたちを探すのは困難をきわめたそうです。林田吉司・東北事務所長は 「阪神大震災のときは、新聞を片手にその地域や避難所に行けば、震災遺児や震災孤児を見つけることができた。しかし、今回の震災では範囲が広いことや、手を挙げてくれることが前提の制度のために、難しかった」と語っています。

そのため、東北事務所を設置し、5チーム(1チーム3人)を編成し、地道に被災地を回って歩きました。学校にも通い、校長や副校長にしつこく言って、意識してくれるようにお願いしました。それはこれまで実績のあり、教師にも知れ渡っている「あしなが」だからこそ、できる側面もあったようです。

今後は、親を亡くした子ども達を対象にした「レインボーハウス」(仮称)の建設計画もあります。すでに宮城県石巻市では建設のめどがつきました。そのほかにも岩手県大槌町や陸前高田市、宮城県仙台市、福島県南相馬市などにも作る予定だといいます。

さらには、広く社会的養護の必要性を訴える団体からの、被災地支援も開始。国際NGO「子どもの村 福岡」は、11年12月に仙台市内で事務所「東北・SOS子どもの村情報センター」を開設しました。

東北では、まだ「子どもの村」自体の存在は知られていません。しかし、社会的養護の必要性は、震災以降、関心が高まりつつあるのも事実。現在の事務所スタッフも仙台市在住者であり、震災後に「子どもの村」を知りました。ただ、より多くの市民や企業に知ってもらいたいと、3月24日には「大震災で親を失った子どもたちのために」が宮城県行政庁舎内で開催されることになったそうです。

大谷順子事務局長は、「私たちは、家族と一緒に暮らせない子ども達を施設ではなく、家庭的な環境で育てるべきと考えています。震災で傷ついた子どもたちのケアをきっかけに、様々な場面で心に傷を負った子どもたちへの専門的な支援が必要です。日常生活の中で、育てを保障することが大切なのです」と話しています。

被災地支援は物資支援もまだ十分とは言えません。その意味では、まだ物理的な支援の必要もあります。
一方で、今後は、傷ついた心をどう癒していくのか…当事者が安心して、安全でいられる場所づくり、人材育成、さらには経済的支援が求められています。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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