「茶のしずく」事件の背景 | NewsCafe

「茶のしずく」事件の背景

社会 ニュース
日本の世帯数は概ね4700万世帯。4600万個売れた商品は、統計学的に言えば「日本中の家庭に一つある」と言う事になる。
消耗品でヘビーユーザーがいる商品としても大変なヒット商品。通信販売の世界には、時々そんな「お化け商品」が出現する。大昔で言えば、洗顔美顔器やぶら下がり健康器具。最近ではビリーズブートキャンプのDVDなどが該当する。

今回のテーマのお化け商品は「茶のしずく石鹸」だ。

福岡に本社を置く通販会社の35才の若い社長が7年前に、お茶で顔を洗うと肌が綺麗になると言う祖母の話をヒントに商品を発想。5年前から広告やTV通販に乗り出し、連続3年"洗顔料市場の売り上げNo.1"も獲得するなど、文字通り一山当てたのがこの商品だ。

そんな中で起こったのが「商品に小麦由来のタンパク質がシットリ成分として含まれており、それが毎日の使用で顔の皮膚に蓄積され、ついには小麦アレルギーの引き金を引き、500人余りがアレルギーを発症し、70人余りが入院・中には意識不明になる人も出る」と言う騒ぎ。最近幼児を中心に「小麦アレルギー」が増えているようである。給食が食べられないなど保護者は大変な苦労をし、万が一小麦製品を食べると死に至ることもあると聞く。今回の問題は花粉症と同じで、"小麦と言うアレルゲン成分の累積による発症"である。

まさに小麦アレルギーに無知な通販会社の罪深い犯罪的な行為と残念ながらいえる。この事件の第一の問題点は、通販化粧品専門の大手生産受託メーカーが相手先ブランドで製造している商品だということだろう。

製造のリスクがない製造委託化粧品の通販は「参入が容易で・継続購入が期待できる美味しいマーケット」なのである。通販会社が受け持つのは、商品コンセプトとマーケティングだけであり、製品のクレームの多くは通販会社からメーカーに丸投げされてしまうのだ。

この事件でも国民生活センター・消費者庁に「小麦アレルギーが…」と通報があり、厚生労働省がこれを受けて商品に注意書きを入れるように、と業界を指導したが通販会社はDMでの告知にとどまり「製品の回収は事故発生から半年後」だという。通販会社の"当事者意識の欠如"という点が指摘できる。

識者は『通販会社の責任は大きいが、消費者庁とそれを監督する厚厚生労働省の責任も大きい。消費者庁は「産業育成が目的の官庁の中で唯一に近い消費者保護の砦」のはずであるが最近は見当違いが多い。今回の経緯でも病院からの通報を受けての対応は鈍すぎる。こんな事では心配である』と言う。「赤坂の1等地のビルに入って以来、感覚が鈍くなったのでは…」と言いたくなる。

それにしてもTVの深夜の通販番組を見ると健康食品・サプリメント・化粧品に中には"?"と思わざるを得ないものが散見。「あくまでも個人の感想です」との表示はあるが「クーリングオフがあるから&効かなければ返品できるから」と安易な購入はいかがなものか、と感じている。

[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]
《NewsCafeコラム》
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