私は、歌舞伎町のバーを会場に、2月から本や電子書籍に関するトーク番組「BookTalk」(協力:ソラノート)をインターネットで配信しています。第一回目に二村さんに来ていただきました。
「女性は、商業主義に利用されて『恋をすると女性はきれいになる』とか、『恋をがんばれ』とか、そんなことで踊らされていると、どんどん苦しくなりますよ。そういうことをこの本で言いたかったんです」
二村さんはこう述べていました。
また、「なぜ、自分が好きな人には好かれない、または、好きではない人に好かれるのか?」という仮説を出して、「それは、自分を好きではないから」という答えを出しています。
「自分のことが嫌いってわかっていて、そんな自分のことが大好き。ねじれた自意識が、わりと、文科系の女子には多い。マンガや文章を読んだり、書いたりする女子も、キャバクラ嬢にも、AV女優もそう。みんな嫌いで、そんな自分が好き」
これを前提にすると、自分のことが好きじゃないから、自分を好きな男性に対して「バカじゃない?」とバカにしたり、「嘘なんじゃないか?」と疑心暗鬼になったりする。
たしかに、自分が好きになれない女性の恋愛トークをすると、なかなかうまくいかない話を聞きます。
そして、その原因の一つに「自分を好きになれない」ことがあるように、私も思っています。
このトーク番組にゲスト出演していた、『人生で必要なことはおおむねマンガが教えてくれた』(NTT出版)の著者で、マンガ・エッセイストの川原和子さんは、「自分のことが好きになれない女性」のイメージとして、安野モヨコの『ハッピーマニア』を例に挙げています。
「主人公の重田加代子は『ラブ』を求めて常に暴走する。
作中でずばり、『私は私を好きになるような男は嫌いなのよ』という台詞が出てくる。
『私を好きになるような男は見る目がないんじゃない?』と思っていて、自分なんか好きにならない『高め』の人を振り向かせる。
でも、振り向いたら、ちょっと違うと思ってしまう。
二股にされて、足蹴にされる。
なにか違うのではないか、と思ってしまう」
もちろん、そんな女性ばかりではないことは二村さんも分かっています。
しかし、恋愛がうまくいかない理由のひとつに「自分のことが好きじゃない」ことがあるのです。
ただ、二村さんは「自分を好きになる、といっても、それは二つある」と言います。
向上心の源になる「ナルシズム」と、ありのままの自分を受け入れる「自己肯定」、の二つです。
そして、「自己肯定していないとナルシズムが強いのです」(P39)と指摘しています。
もう1人のゲストで、同書の構成を手伝ったライターの丸山桜奈さんは、
「自分が好きになる人は、自分を好きになってくれないんです。
好きになられると、好きになれない。
そういうのを何度か繰り返していて、何でうまくいかないのかを話したんです。
そしたら、(二村さんから)一言で返って来たんです。
『あなたが自己肯定してないから』と。
その瞬間、ドスーンと腑に落ちたんです」
と話していました。
そして、「恋愛に限らず、仕事や家族関係などの人生全般でも生きやすくなった」とも言っていました。
二村さんは相手を求める「恋」と相手を認める「愛」を分けています。
そして、「恋に縛られずに、愛に変わっていく恋」をしようと説いています。
私も恋愛に関する本やコラムを書いています。
自分の弱点(二村さんは「心の穴」や「感情や行動のクセ」と表現しています)を知るために恋をして、乗り越えようとするという点は、私も同感です。
弱点を悪用して、支配関係に持ち込む、DVカップルも恋愛の一つですが、それは「愛に変化していく恋」ではないのです。
「生きづらさ」を抱えていると、恋愛の場面で、そのありようが見え隠れします。
同書は女性向けの恋愛指南本と言いました。しかし、恋愛は一方だけがするわけではありません。
また、同性愛などのセクシャル・マイノリティの人たちも同様の問題を抱えています。そのため、「男性の読者のためのまえがき」と「男性の読者のためのあとがき」もあります。
そこには、支配的な恋愛をしないためのヒントが隠されています。(終わり)
《NewsCafeコラム》
page top