韓国で大ヒット『金子文子と朴烈』 ヒロイン演じたチェ・ヒソの原点は日本で過ごした小学校時代にあった | NewsCafe

韓国で大ヒット『金子文子と朴烈』 ヒロイン演じたチェ・ヒソの原点は日本で過ごした小学校時代にあった

芸能 AbemaTIMES/エンタメ
韓国で大ヒット『金子文子と朴烈』 ヒロイン演じたチェ・ヒソの原点は日本で過ごした小学校時代にあった

 実在した大正期の日本人アナキストを演じ、韓国公開当時に“今年一番の新人”と呼ばれた韓国人女優がいる。それが映画『金子文子と朴烈』(2月16日公開)で長編映画初主演を務めたチェ・ヒソだ。ほぼ全編日本語セリフでアナキスト・金子文子に成りきり、韓国の主要映画賞を総なめ。映画『万引き家族』でパルムドールを受賞した是枝裕和監督とも、韓国のバラエティ番組で対談した。現在32歳と遅咲きながらも、着実に夢を叶えている。その夢の原点こそ、ここ日本だった。

 人生の転機は、大阪に住んでいた10歳の頃。小学校の学芸会で、韓国に古くから伝わるおとぎ話「沈清伝」で主人公のシムチョンに抜擢された。「演劇がスタートする直前の舞台の上で、幕が上がるのを待つ瞬間。その時のドキドキワクワクの緊張が私の中ですごく心地が良くて、具体的にどんなお芝居をしたのかは覚えていないのですが、その感覚がずっと記憶に残っている」と女優開眼のきっかけを振り返る。


 日本には約5年の滞在となったが、その後も語学を学んでおり、日本語はネイティブに近い。その堪能な日本語からイ・ジュンイク監督の前作『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』に登場する日本人大学生役に抜擢され、それが縁で金子文子役という自身初の映画主演を勝ち取った。「イ監督から『空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~』撮影中に本作の企画があることを聞き、“君にだったら任せることができる”と言われて。でもメジャー映画の大きな役は初めてですから責任は重大で」と苦笑い。

 役作りのためにとりかかったのは、膨大な資料を読み込むこと。『何が私をこうさせたか 獄中手記』『金子文子 自己・天皇制国家・朝鮮人』などを日本から購入して取り寄せたが、中でも苦労したのは裁判記録をまとめた350ページに渡る書籍。日本人でさえ頭の痛くなるような固い文体は、旧漢字とカタカナで構成されており「国語辞典を片手に読み始めましたが、1ページ目で挫折しかかりました。金子文子と朴烈の記述は350ページのうちの50ページ程ですが、読み終わるのに1ヶ月くらいかかりました」と地道な作業に時間を費やし、それぞれの資料は付箋だらけのボロボロになった。


 その苦労が金子文子を立体的に演じるのに役立ったことは言うまでもないが、慣れない文章に触れて頭がこんがらがることも。そんな時のリフレッシュの友は「ウィスキーとチョコレート!でも酔っぱらってしまったら集中できないのでたしなむ程度に」とニコリ。加えて、これまで歩んできた女優への道のりも奮起の要因に。「女優歴10年のうち8年は辛く苦しいことばかり。オーディションに落ちるのは当たり前、ギャラがもらえない仕事もありました。でも『女優こそ私の仕事なんだ!』という信念は一度も折れませんでした」と力を込める。


 オーディションで不合格も「次の作品で会いましょう」と言ってくれた関係者、観客たった6人で上演した舞台での声援、そして開幕直前のステージでドキドキしていた10歳の頃の自分。背中を押され続けてここまで来たという自負がある。そして映画『金子文子と朴烈』は韓国で235万人動員の大ヒット、チェ自身も数々の映画賞で受賞し、注目の新人女優としてブレイクした。夢を実現させた今、チェは日本に住んでいた頃の幼い自分に「夢を諦めないで、と言いたい」と瞳を潤ませつつ「たくさんの賞をいただいたことは嬉しいです。しかしあくまでスタートライン。これからの活動が重要」と自らに言い聞かせる。

 日本語が堪能ということで、韓国のバラエティ番組で憧れの映画監督・是枝裕和と初対面も果たした。「日本公開前にも関わらず、すでに作品を見ていただいており、『日本語が上手だ』と褒めてくれました。パルムドールのトロフィーも持たせていただき、とても重かった」と嬉しそう。長年の是枝監督ファンで「これまでの作品に対する感謝の意味を込めて、花束と日本語で書いた手紙を渡すこともできました。助演でもワンシーンだけでもいいから是枝監督の作品に出たい」と声を弾ませる。


 女優としての人生最大の夢は、カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲ること。今度は自らの名前が刻まれたカンヌのトロフィーを持ちたい。「韓国では『願望は口にすれば叶う』と言われています。その意志が私の中の行動力にも繋がるので、10年以内には国際的な主演女優賞を必ずとります!」。“今年一番の新人”から“世界で一番の演技派”と言われる日を目指す。


ストーリー

URL: www.youtube.com

 1923年、東京。社会主義者たちが集う有楽町のおでん屋で働く金子文子は、「犬ころ」という詩に心を奪われる。この詩を書いたのは朝鮮人アナキストの朴烈。出会ってすぐに朴烈の強靭な意志とその孤独さに共鳴した文子は、唯一無二の同志、そして恋人として共に生きる事を決めた。ふたりの発案により日本人や在日朝鮮人による「不逞社」が結成された。しかし同年9月1日、日本列島を襲った関東大震災により、ふたりの運命は大きなうねりに巻き込まれていく。 内務大臣・水野錬太郎を筆頭に、日本政府は、関東大震災の人々の不安を鎮めるため、朝鮮人や社会主義者らを無差別に総検束。朴烈、文子たちも検束された。社会のどん底で生きてきたふたりは、社会を変える為、そして自分たちの誇りの為に、獄中で闘う事を決意。ふたりの闘いは韓国にも広まり、多くの支持者を得ると同時に、日本の内閣を混乱に陥れていた。そして国家を根底から揺るがす歴史的な裁判に身を投じていく事になるふたりには、過酷な運命が待ち受けていた…。

テキスト:石井隼人

写真:You Ishii


(C)2017, CINEWORLD & MEGABOX JOONGANG PLUS M , ALL RIGHTS RESERVED

《AbemaTIMES》

特集

page top