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「虐待増加」私たちにできることは

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子どもが虐待を受けているとして、警察が児童相談所に通告した数が今年の上半期(1~6月)で2万4511人でした。上半期の統計を取り始めて5年連続で増加しています。これは、年間で過去最多だった昨年の上半期も上回った。心理的虐待が約5割。このうち、子どもは直接暴力を受けないが、目の前で配偶者に暴力をふるう「面前DV」が増えています。そんな事態になっている中で私たちができることはあるのでしょうか。

警察庁によると、最も多かった心理的虐待は1万6669人。全体の68%を占めています。身体的虐待は5025人で、20.5%を占めています。摘発がされた事件で、被害者とされた子どもは523人で、昨年同期よりも141人増えて、最多を更新しています。年齢別では、0~5歳が142人、6~10歳が114人、11歳以上が267人でした。このうち、子どもが亡くなったのは19人で、3.6%でした。割合としては減少傾向です。加害者は実父が223人で最も多く占めています。ついで実母は137人。養父・継父が79人でした。

今年は児童福祉法も改正されました。改正第1条の「目的」に「子どもの権利条約の精神」との文言が入っています。これまで児童福祉法は「権利視点」が弱いと言われてきましたが、大きく変えたのです。また、児童相談所や児童福祉司も増えることになります。悩み多き子育ての支援がこれまでより充実します。ただ、心理的虐待は、わかりにくく、なかなか相談者から専門家に伝わらないのです。面前DVならなおさらです。

また、死亡に至るまでの虐待は深刻です。

厚生労働省は児童虐待防止法に基づいて、都道府県や指定都市、設置市に対する調査で把握した死亡事例を報告している。「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第11次報告、2013年4月1日~14年3月31日)」によると、一年間で63例、69人。このうち心中によるものは27例、33人でした。前回調査よりは減少したとはいえ、増減を繰り返しており、減少傾向とは言えません。減少することはよいことですが、死亡した子どもが少なくなったといっても、数で判断できるものではありません。

昨年度の児童相談所への相談件数は増加傾向にあります。中でも「心理的虐待」は10ポイント近く増加しています。警察からの通告も増えています。相談や通告が増えるというのは必ずしも悪いことではありません。相談者が悩みを抱えたときに、児童相談所という選択が増えてきたことを意味します。また、警察と児童相談所が連携しようとしている姿が見えるからです。一方、相談件数が右肩あがりということは、悩みを抱えながらの子育てが徐々に深刻さを増している、という二面性があります。

虐待あれた体験は、その後の「自殺」に結びつきやすいとも言われています。虐待だけではありませんが、安定感がなく、居場所として感じられない家庭で育った子どもは孤独感を持ちやすいのです。自殺をした人の遺族への聞き取り調査(心理学的剖検)では、子ども時代の虐待や暴力が自殺のリスクを高めるとの報告もあります。そうした子どもたちに出会った場合、どうするのがよいのでしょう。

「TALKの原則」というのがあります。「Tell:言葉に出して心配していることを伝える」、「Ask:死にたいという気持ちについて素直に尋ねる」、「Listen:理解しようと聴き役に回る」、「Keep safe:安全を確保する。適切な援助を求める」...ことを言います。ただ、こうしたことを一人で対応してしまうと、その人自身が心理的に疲れてしまうことがあります。そして、信頼出来る人に頼ったり、関係機関をつなぐことが大切です。
[執筆者:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》
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