安倍政権の「3年育休」について | NewsCafe

安倍政権の「3年育休」について

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安倍晋三総理は19日、「成長戦略スピーチ」を行ないました。その中で「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」と称して、育児休業を3年の推進を掲げました。このことが話題になっています。

スピーチで安倍総理は、妊娠・出産を機に退職した人の理由について「仕事との両立が難しい」よりも、「家事や育児に専念するために自発的にやめた」が一番多いという現状を指摘しました。

これは、厚生労働省の「子育て期の男女への仕事と子育ての両立に関するアンケート調査」(2010年9月発表、インターネットモニター調査)に基づくものです。それによると、妊娠・出産を機に正社員の女性が仕事を辞めた理由が最も多いのは「家事、育児に専念するため自発的にやめた」が39%で、「仕事と育児の両立が難しいから」が26.1%、「解雇された、退職勧奨された」が9%となっています。

一方で、正社員男性の58.4%、正社員女性の52.3%は「仕事・子育てを両立」したいと考えているものの、男女ともに現実には「仕事優先」の割合が高いことが示されています。子どもを持つ正社員男性は、その直前と比べて「40時間以上50時間未満」の割合が34.8%から43.8と増えています。

安倍総理の語り方は現実を追認する形です。つまり、仕事との両立が難しいのなら、仕事を離れて子育てに専念してみてはどうか、というものです。もちろんそうした割合が多いのが現実です。しかしこれを推進する「3年育休」は、法的義務は一年ですから、余裕のない企業の場合は一年を過ぎると無給の可能性があります。

どのように仕事と子育てを考えるかは、その個人の選択にゆだねられるべきで、国家が画一的に決めるものではあってはいけないと思います。3年の育児休暇をとっても現場復帰ができる環境であればすばらしいことでしょう。ただ、現状のままで「3年育休」が導入されれば、今の日本では、責任ある職場に復帰することはさらに難しくなるとの見方が強いことでしょう。

また今の育児休業のシステムを前提にすると「3年育休」は、男女の一方に3年間の育児休暇を強いるものです。そして男性の3%しか育児休暇をとっていないことを考えたら、育児=女性のものとなるのは確実ではないでしょうか。ますます、育児は協業という考え方から離れていく気がします。

しかし3歳までの間に、どちらでも育児休暇がとれるシステムであれば、一歳までは母親が、二歳までは父親が、といった相互に育児休暇が取れたりし、育児によって職場を離れるリスクを分散できるのではないでしょうか。そうした「3年育休」であれば同意したいと思っています。

さらに言えば、こうした「3年育休」は正社員を前提にしています。派遣労働者やパート・アルバイト、自営業者は、その政策からこぼれ落ちています。正社員しか取得できない育休システムを改善してほしいものです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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