「一票の格差」に我慢するのか | NewsCafe

「一票の格差」に我慢するのか

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野田内閣の与党民主党に対する最大の使命は「任期満了の2年以内に行わなければならない衆議院選挙=総選挙」。少なくとも民主党を負けないようにする事である。
衆議院の解散権は首相の伝家の宝刀であるがそれを抜けなくしているのが、放置されたままの国会議員の定数の削減&一票の格差問題である。
なかでも一票の格差問題は裁判所の判断を巻き込んだ"現状の定数での選挙は違憲"と言う大問題。一部のメデイアは「一票の格差を是正しない限り総選挙は出来ない」と論じている始末だ。

昨年7月の参議院選挙で「一票に最大で5倍以上の格差が生じたのは憲法が定める平等の原則に反するので選挙は無効」との弁護士グループの訴えに対して、東京高裁は「10数年にわたり、不平等の状態を放置したのは、国会の怠慢であり違憲」との判決を出した。

最小の鳥取県の24万人/1名に対して、最大の神奈川県は121万人/1名の格差を見ると、至極当然な判決だ。再三の裁判所の警告にも関わらず国会が抜本的な改革をしない事に対し最高裁が"国会の怠慢"と鉄槌を下した事になる。

また政権交代が行われた2009年8月の衆議院選挙では「一票の格差」が最大で2.304倍(高知県第3区:千葉県第4区)だったが、これに対する裁判でも最高裁大法廷は一人別枠方式に係る部分は、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っており、この基準に従っている選挙区割りも違憲状態にあり衆議院議員選挙における投票価値の平等の要求にこたえる為にできるだけ速やかに一人別枠方式を廃止し、区割規定を改正するなど、その要請にかなう立法的措置を講ずる必要がある」と選挙制度の見直しを求めた。

まさに国家議員の選挙は「違憲状態」の上に成り立っているのである。
従来の代議士連中の考えは「格差をつけないと過疎県から議員がいなくなる」であったが、判決は「年金・雇用・税制・など国民が等しく影響を受ける問題に対し、国民の意見は等しく反映されるべき」と言っている。正にその通りである。

日本の国政は「間接民主主義」。総理大臣をはじめ、法案は国会議員の多数決で決まる。その意味で大きな格差の元で選ばれた議員の存在は「多数決の原理」そのものの信頼性を失わせるものだ。アメリカでは「限りなく1票の格差をなくす」が常識であり「1:0.99の格差すら違憲」と米最高裁で判決されている。

5倍の格差・2.3倍の格差…といわれても大方の大都市圏の住民は「自分達の1票の権利は守られているのだから、マー良いか…」と曖昧に考えてきたが大都市圏での立候補者が「清き0.2票を・0.5票を」と言う表現をしたら大騒ぎになるだろうと思う。

第三次補正予算に続いて来年度予算が審議される。正しく民意が反映されない「一票の格差放置の国会」の多数決で決まるが、それは「予算そのものの信頼性」にも関わるのではないだろうか。都市圏在住の有権者は異常な状態で行われる選挙」怒るべきだが、現実には地方選挙や国政選挙の投票率は低く、多くの国民が選挙そのものに無関心である。

とにかく民主主義の基礎は限りなく一票の格差ゼロを目指す事だ。
まさに「一票の格差是正は焦眉の急」である。

[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]
《NewsCafeコラム》
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