食卓の危機 ~拡散・蓄積・濃縮の連鎖~ | NewsCafe

食卓の危機 ~拡散・蓄積・濃縮の連鎖~

社会 ニュース

スーパーマーケットの店頭は時代を映す鏡であり、物書きを生業する人士には欠かせない"定点観測スポット"である。
過去にもオイルショックの時はトイレットペーパーが一斉に姿を消し、マグロの水銀汚染が話題になったときは近海物の魚が中心に。狂牛病(BSE)騒ぎのときはアメリカ牛に変り国産和牛肉が肉売り場の中心になり、震災があると防災グッズや缶詰・レトルト食品などが飛ぶ様に売れ…つい最近では放射能騒ぎでミネラルウオーターが店頭から消え・計画停電で電池類が売り切れとなった事は記憶に新しい。

そして昨今では「セシウム牛騒ぎ」。国産黒毛和牛が牛肉売り場の脇に追いやられている。つい数ヶ月前まで「たまには和牛でスキヤキ」などと言っていたのが夢の様…今や"セシウムの被害が無いアメリカ肉やオージービーフ"がトレンドなのだ。最近は首都圏では小さい子供のいるお母さんのイライラ感が増している、と言われている。識者は「子供に何を食べさせたら良いのかの悩みがイライラ感を助長している」と言うが、まさにその通りだ。

今回の「セシウム牛問題」の根源は、放射能が拡散し、それが牧草に蓄積、それを食べた牛が汚染され…という食物連鎖の汚染。国からの連絡が不十分なばかりの"防げた人災"と喧伝されているが、専門家は「予想以上に放射能が広範囲に拡散・蓄積されている事を隠した結果ではないか?現在も放射能の拡散は続いている。これからも同様な事が起こる可能性は高い」と指摘している。
仮にそうだとすると、今後「セシウム米・セシウム野菜・セシウム果実・セシウム乳製品・セシウム豚肉・セシウム鶏肉…」が出てくるのは必定の様に思える。

現在、政府や東電は「放射能汚染水の外部流失」を非常に恐れている。大量の放射能汚染水が外部(海洋)に流失し、それが海草に吸収され、その海草を小魚が食べ、その小魚を中型の地魚が食べ、その中魚を大型の回遊魚が食べ…上位に行くほどセシウムなどの放射物質が濃縮されてゆくと言う「恐怖の連鎖」が始まるからである。

まさに「水俣の水銀中毒」と同じ食物連鎖による濃縮の構図。「この放射線量は当面は問題ない」と言うがセシウムの半減期は30年だ。政府の言だけで自分の子供の将来を預かる母親の不安を解消するには至らない。

しかし国の検査を信じて危きに近寄らず自分で放射線量を測るしか打つ手が無いのも現実。また、牛豚や野菜などの被害は国内にとどまるが、海洋生物の被害は地球規模に拡散するのである。

例によって政府は「全量検査、問題があれば国が買上げ・東電と分担して負担する」と言う。しかし海洋汚染による被害は「地球規模」であることを考えると、その補償は天文学的な数字になるはずだ。「国が…」と言うことは「最後は国民の税金で払う」と言う事と同義語である。「放射能被害者(多くの国民)が加害者(東電や国)に代って払う」と言う不思議な構図。

とにかく「放射能汚染水」の外部流失を防ぐべく全力を傾注して欲しいと願うばかりだ。


[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]
《NewsCafeコラム》
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