タレントの死から自殺数が増加 ~要因について考える~ | NewsCafe

タレントの死から自殺数が増加 ~要因について考える~

社会 ニュース

「タレントの自殺に関連する報道が理由で、5月の自殺者が増えた」──。
このような報告が7月4日の内閣府の自殺対策タスクフォースでの会合で発表されました。

警察庁によると、5月の自殺者は3191人(自殺日)。前の月よりも570人増え、前年と比べると17.4%も増えていることが分かります。
性別は「女性」。一般に女性よりも男性のほうが自殺者数が多いのですが、この月は女性が男性を上回っています。年代としては、30代がトップで、続いて20代でした。通常は60代以上が多いのです。20代~30代の自殺率が増加傾向にあるとはいえ、30代がトップになることは特筆事項でしょう。

NPO法人自殺対策支援センター「ライフリンク」の代表で、内閣府参与の清水康之氏が提出した資料(警察庁のデータ「自殺日別」)によると、今年の1月から5月の平均自殺者数は82人だったのに対して、タレントの自殺関連報道があった翌日(13日)は140人に上昇、10日後の23日も135人と高水準を記録していました。
このことから、タレントの自殺関連報道との因果関係があると指摘されました。亡くなったタレントは女性ですし、20代でしたので、若年女性がネガティブな関連付けをした可能性もあるのではないでしょうか。

自殺関連報道と自殺者数の増加との関連は過去にもありました。
平成17年2月2日の朝刊に載った家族5人の殺人と本人の自殺未遂事件。この日は131人が自殺しています。また、平成18年10月31日の朝刊には、いじめ自殺や履修漏れがあった学校の校長が自殺した記事が掲載され、この日の自殺者は135人。平成16~20年の一日あたりの自殺者数の平均は82.1人だったことから、自殺関連報道との関連性が指摘されています。

これまでの研究では、1984年~87年のオーストリアのウィーンで「自殺の報道のあり方を変えたことで半年で80%も減少した」とも言われています。そのためWHOでは、自殺報道ガイドラインを示して、望ましい報道のあり方を提言しています。
ただし、この5年間で最も多かったのは平成16年3月1日で154人。この日は目立った自殺関連報道はありません。月別では「3月」が最も多く、曜日別では「月曜日」が多いのですが、その日はそれを反映しています。また、毎月の1日は「108.6人」であり、多くなることが統計的に言える日でもありました。そのため、自殺関連報道だけが、自殺者数をあげるとは言えません。

では、他の要因はないのか、と考えてみます。同会議で提出された別の資料(警察庁の県別データ)を見てみましょう。特に、東日本大震災で被災したた東北3県について見てみます。岩手県や宮城県では目立った上昇はしていません。しかし、福島県で前の月に比べると急上昇となっています。2年前の5月と同じではありますが、ここ数年、自殺者数が減ってきていましたので、「急上昇」でした。
なぜ、福島県が急上昇だったのでしょうか。それは、やはり、福島第一原発の事故による影響もあるのではないか、と思われます。職業別に見てみますと、自営業者が増えています。また、原因別にみますと、「健康問題」が多くなっています。この日は、タレントの自殺関連報道だけでなく、原発事故により、原子炉がメルトダウンしていたと発表された日でもありました。被災地の中でも、福島県で多くなっているのは、関連があると思わざるをえないでしょう。


私は、1998年以来、若者の生きづらさをキーワードに、自殺や自傷、依存症、援助交際、家出、少年事件などを取材し、執筆をしてきました。特にインターネットコミュニケーションとの関連に関心を持っていました。最近では、マスメディアよりもインターネットで詳細な自殺関連情報を入手することも可能です。そのため、自殺の手段を知ったり、心中相手を募っての自殺もありました。

インターネットが自殺を増やしているのでしょうか。たしかに、インターネットがあったために自殺をした人はいるでしょう。単に自殺の手段を知っただけでなく、ネットコミュニケーションに不安を抱いて、悲観的になっていったケースもあります。「ネットがあったから自殺した」人の数はある程度、可視下し、数値下することができます。この点だけ考えれば、インターネットは自殺者を増やす、と言えるかもしれません。

しかし一方で、「インターネットがあったので、自殺をしなかった」人もいます。悩みの相談に乗ってくれたり、信頼できる人との出会いがあったり、寂しさを紛らわせることができたりしています。親友ができたり、恋人ができるケースもあります。なかには結婚したという話も聞きます。ただ、こうした人たちの数は把握できません。可視化や数値化できないのです。そのため、インターネットが自殺者を増やすかどうかは一概には言えないのです。

自殺を巡る報道は、原則的に、WHOのガイドラインを守ることが必要でしょう。特にストレートニュースにおいては、「不意打ち」もあります。しかし、雑誌や書籍、新聞の特集の記事では、その企画趣旨を説明するか、趣旨が提示できているのであれば、必ずしもガイドライン通りである必要はないと思っています。

たとえば、毎日新聞が、原発事故を苦にした、南相馬市在住の女性(93)の自殺を報道しました。この内容は、遺書の全文を報道するなど、WHOのガイドラインに違反しています。しかし、背景取材もきちんとしていますし、誠意が感じられるものでした。問題意識があり、社会に啓発するものであれば、読者の反応も好意的になったりします。私は当初、形式的な意味でガイドライン違反でしたが、問題を投げかけるものとして、良質な記事となったりします。

このあたりは、報道する側の良心が問われるところです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://foomii.com/mobile/00022)を配信中]
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